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【高校生交換留学体験談】H.Y.さん(エストニア派遣)Part.9

更新日:2022年6月16日

 EIL高校生交換留学プログラムの2020年夏派遣プログラムは、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、原則としてすべて中止となりましたが、一部プログラム参加の強い希望をいただいた生徒については、派遣先国の状況も見ながらプログラムを催行しました。  そのうちのお1人がエストニア派遣のH.Y.さんです。実はエストニア派遣プログラムは2020年派遣から募集を開始し、H.Y.さんが記念すべき第一号です。「エストニア派遣第一号として、自身の留学体験を多くの方に伝えたい!」との思いで、自ら体験レポートの執筆を申し出てくれました。


 ついにHさんの留学生活も終わりを迎え、無事6月に帰国されました。帰国後に留学生活を振り返った最終レポートを寄せてくれました。ぜひお楽しみください♪

 

 早くも帰国から1ヶ月が経ちました。今回は、エストニア留学体験記最終回として、テーマごとに留学を振り返っていこうと思います。


ドイツ、フランス、イタリアからの留学生仲間と

エストニアでの生活

■歴史と言語

 初めて読む方向けに、まずエストニアとはどんな国か。ヨーロッパのバルト三国の一番上の国(フィンランドの南)に位置する、人口は奈良県ほど、面積は九州ほどの自然豊かな国です。1991年に正式に独立するまで、ドイツ、デンマーク、ソ連などに支配されていたという悲惨な歴史があります。この影響を生活の中からいくつか感じました。

 1つ目、旧市街では、様々な国の国旗を目にする機会が多く、デンマークの国旗が植民地時代の象徴として、大きく飾られています。写真の記念碑がある近くの地面には、横の長さ4mほどのデンマークの国旗が書かれていました。


 2つ目、小学5年生から必修でロシア語、10年生(日本の高校1年)から学校によってドイツ語やフランス語を選択します。そのため、エストニア人は母国語のエストニア語だけではなく、英語、ロシア語の他もう1言語話せる人が多いのが特徴です。バス車内アナウンスは、エストニア語、英語、ロシア語の順で流れます。

 3つ目、テレビでアメリカやイギリスの番組が、エストニア語字幕で、放映されていたことです。また、幼い子はエストニア人YouTuberではなく、英語の動画を見ています。日本では、日本語以外を耳にする機会は少ないですが、エストニアでは幼い頃から多言語を耳にする機会が多いので、複数言語を使いこなすことができるのかなと感じました。


■食生活

 エストニアは寒い国(冬には氷点下25℃)のため、乳製品と、ベリー類が豊富です。特にヨーグルトは沢山の種類があり、ほぼ毎日食べるほど大好きな物でした。

スーパーの乳製品売り場の一部



 また、エストニア料理の味付けは基本塩とサワークリーム等で、肉、じゃがいも、人参、玉ねぎの摂取量が多く、あっさりとした印象を受けました。日本と比較すると、野菜の種類が少なく、高価なものとなっています。春菊、青梗菜、ごぼう、蓮根など様々な食材を組み合わせ、栄養バランスの良いご飯を作ってくれる日本のお母さん方は本当にすごいなと実感し、調味料が多く、様々な味を楽しめる日本食がさらに好きになりました。ちなみに、エストニアのレストランでも日本食を食べることはできますし、スーパーで海苔、米、醤油などを買うことができました。

祖父母がつくってくれた昼食

■交通面

 大都市(首都タリン、タルトゥ、パルノゥ)では、駐在者にはカードが渡され、そのカードを持っていれば、バスとトラムを無料で利用することができます。また、地下鉄はなく、電車(日本でいう新幹線のような働きをするもの)は一種類のみあり、一駅は2ユーロ弱と安いです。特に冬は、車で移動する人が多く、信号のない道路はありますが、日本の高速道路のように料金はかかりません。夏場は、レンタル電動スクーターで移動する人の姿を多く見かけます。

アプリ活用で使用できるスクーター

エストニア人の国民性

 日本人以上に、内気で自分のことを語らない人が多く、心を開いてくれるまでにとても時間がかかります。また、日本人のような協調性はなく、一人一人が強い意思を持っています。そのため私は、学校での友達づくりに苦戦しました。移動教室を共にする友達はいたのですが、放課後に遊ぶほどではない、その場の友達と言ったところかなと。私は幸い、9月の時点で日本についてのプレゼンテーションを校外でしていたので、そこで出会った他学年や、留学経験のある友達、バドミントンを一緒にしていた友達、同じ受入団体の友達と仲良くしていました。与えられた学校という環境中だけでとどまらず、積極的に校外のイベントや、習い事等に参加することで、友達がいなくて辛いという経験をせず、人と話すことがさらに好きになりました。


バトミントンを通じて出会った友だち

学校生活

 私は、Grade1(1年生)からGrade12(12年生)まで約20人クラスが2クラスほどの比較的小さな学校のGrade10(10年生 日本における高校1年)に通っていました。学校は家から2キロほどにあり、通学に困ることはありませんでした。初日は、担任の先生が正門まで迎えに来てくれ、学校を簡単に案内し、困ったときに連絡できるようにmessangerのアカウントを交換してくれました。担任は英語の先生だったので、基本的に英語で会話をしていました。時間割は基本的に先生にお任せで決めてもらい、エストニア語(外人向けクラス)英語、数学、地理、化学、イングランドの歴史(英語)、デジタル(英語)体育をとっていました。

 化学と地理以外は、基本的にみんなと同じテストや課題を行い、地理は国名、首都名テスト(エストニア語)、化学は私専用のテスト(エストニア語)を作ってもらい、辞書を使いながら解かせてもらいました。初めに、先生にお願いしたこともあり、現地の生徒同様の成績を貰うことができました。これは、自分の自信に繋がるほか、大学受験時のアドバンテージにもなるため、早めに先生に相談して良かったと思います。私の学校では、ホームルームクラスはなく、1限目は8時から始まり、曜日によっては5時間目で終わる日がある一方で、8時間目(16時)まで授業がある日もありました。授業は一コマ45分で、10分休憩を挟みます。昼食休みは20分のみで、無料のご飯を食堂でいただくことができました。空きコマ時は、図書室がないため、廊下に設置された椅子で、勉強等をして過ごしていました。


ホストファミリーとの生活

 私のホストファミリーの家族構成は、10歳のホストシスター、マザー、ファザー、犬、モルモットでした。タリン市内に住んでいたこともあり、その中では広めのアパートに住んでいました。留学初日、「今日からここはあなたの家だから、好きなものを好きな時に食べていいんだよ」と言われ、1日目にして家族の一部になれた気がしました。その時の心情は忘れられません。

 週末には友達との予定を入れずに、ファミリーとドライブをしたり、祖父母の自宅で過ごしていました。Tallinn内 Tartu pärnu Haapsalu Kaiu など、エストニア内の多くの場所に連れて行ってもらい、自然の豊かさと、人の温かさを感じました。夕食後は、一緒に映画を見たり、モノポリーをしながら過ごしていることが多かったです。週末の朝は、将来の夢や、日本のこと、夢の話で盛り上がり、気がつくと1時間以上が経っていることが多々ありました。私に留学生としてではなく、一人の人として接してくれ、支え続けてくれたホストマザーに感謝の気持ちでいっぱいです。

帰国前日のラストドライブ

高校留学が私に与えた影響

 留学は非日常のことで、今振り返るとパラレルワールドにいたように感じます。言語、景色、食、何もかもが異なる環境での生活は、新しい発見の連続で、これまでで一番密度が濃く、長い9か月でした。


最後の週末に親戚を招き、日本食を振舞ったとき

 2020年夏出発のEIL高校生交換留学プログラムは公式には中止になったため、渡航するかは団体でもなく、親でもなく、自分が選択する必要がありました。多くの人が延期し、たくさんの方から危ないんじゃないかという言葉をいただき、本当に悩んだことを覚えています。しかし、自分の直感を信じ、コロナ渦の留学に飛び込みました。自ら決断することで、自分にプレッシャーを与え、それを留学中の様々な挑戦への原動力にできたため、満足のいく、学びの多い留学になったと思います。

 その中で高校1年の今、気づけて良かったことを1つ書きたい思います。それは、日本の高校の授業、学校生活が素晴らしいということです。「授業がめんどくさいなぁ」「テスト期間は憂鬱だなぁ」「部活がきついし辞めたいなぁ」と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。私も、その一人でした。しかし、留学を通し、教育環境を比較することで、いかに自分の置かれていた環境が恵まれていたかということに気づかされました。日本では、良い成績をとるには必然的に、授業内容を理解し、暗記していく必要があります。このスタイルを”やらされる勉強”と、とらえる人が多くいるかもしれません。しかし、私は具体的な目標(例えば定期テストで9割をとるなど)があるからこそ頑張れるタイプなので、エストニアと比較した際、日本のスタイルが合っていることに気づきました。

 日本では先生方がいつでも質問に対応してくれ、授業ごとにパワポやプリントを使い、授業をしてくださいます。エストニアの場合、基本口頭のみで黒板を使った授業をしません。化学を例に挙げると、1年で基礎から無機化学までの全てを終わらせます。単元ごとにテストはありますが、卒業試験(国語、数学、英語のみ)でも大学試験でも化学を使わない場合が多いので、やりっぱなしの勉強になってしまいがちではないかと感じました。

 また、エストニアには部活動はありません。私は、日本で週6回活動を行うバドミントン部に所属していますが、勉強がおろそかになった時、部活のせいにしようとしている自分がいました。しかし、1年間部活動と離れてみて、学生時代に友達とスポーツに打ち込めることは幸せなことで、やり終えたときに自信に繋がることに気づきました。時間があるからと言って勉強がはかどる訳ではないことを留学中に実感したので、部活も勉強も力を抜かないという目標ができました。


受入団体の職員とフランスからの留学生と一緒に

 今年の留学はロックダウンを経験したりと、大変な面も多くありました。しかし、留学前とは考え方が180度変わり、高校生の今、留学して良かったととても思います。留学をただの思い出にせず、この学びを生かし、行動していけるように頑張ります。

 書きたいことはまだまだあるのですが、私のエストニア体験記はこれで終わりにします。この夏noteに留学中のことをもっと詳しく書いていくので、もしよければそちらも読んでみてください。

 

私の留学を支えてくださった全ての方、体験記を読んでくださった方へ、ありがとうございました。


(文章・写真 2020年エストニア派遣H.Y.さん)

 

2020年エストニア派遣H.Y.さんの留学体験記はコチラ。


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