EIL高校生交換留学プログラムの2020年夏派遣プログラムは、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、原則としてすべて中止となりましたが、一部プログラム参加の強い希望をいただいた生徒については、派遣先国の状況も見ながらプログラムを催行しています。 そのうちのお1人がエストニア派遣のH.Y.さんです。実はエストニア派遣プログラムは2020年派遣から募集を開始し、H.Y.さんが記念すべき第一号です。「エストニア派遣第一号として、自身の留学体験を多くの方に伝えたい!」との思いで、自ら体験レポートの執筆を申し出てくれました。
では、第5弾のレポートをお楽しみください♪
10か月留学をしている人にとって、5か月の生活を終え、6か月目に入ることは大きな節目だと思います。コロナの影響で留学を断念しざるを得なかった人、出発時期が大幅に送れてしまった人、留学したもののほとんど学校に行くことができていない人がいる中で、今こうして無事5か月の生活を終えることができたことを嬉しく思うと同時に、感謝の気持ちでいっぱいです。とはいえ、エストニアの感染者数は一時期減少したものの、再び増加し始めてしまい、予断を許さない状態が続いています。そんな中ですが、沢山のことを経験し、感じたのでそれらを伝えていけたらいいなと思います。
第二の首都タルトゥ旅行と犬ぞり体験
1月中旬の週末を使い、ホストファミリーと2泊3日の旅行に行ってきました。まず、タリンから車で南へ4時間ほどのVõru(県)の民泊で一泊しました。翌日の朝、窓から外を見ると一面真っ白の雪景色。洋服を着こみ外に出たのですが、とにかく寒い。温度計を見ると-18℃、なんと冷凍庫と同じ温度だったのです。約一か月間、タリンは曇っていて青空を見ることができなかったのですが、ここでは綺麗な青空を見ることができたので明るい気持ちになりました。民泊の周りを散歩している時に目元に違和感を感じたので、触ってみるとまつ毛が凍っていました。寒い中濡れたタオルを振り回すと一瞬にして凍るのは知っていましたが、まさか歩いているだけでまつ毛が凍るとは、、。ここでしか経験できない貴重な体験でした。
その後、車で1時間ほど移動し、人生初めての犬ぞりを体験しました。そこでは、沢山の犬たちがのびのび暮らしていました。私とシスター、飼い主の方の3人で一つのそりに乗り、約12匹の犬たちが引っ張ってくれました。初め、道は確保されているもののどのように走り出し、止まることなどを犬に指示するのだろうと疑問に感じていましたが、その答えは意外なものでした。力で強制するのではなく、走り出してほしいときにただ「ホッホイ」と言葉をかけるだけだったのです。そりのスピードは自転車でゆっくり走る速さほどですが、そりなのでそれ以上に速く感じました。
夜はそこから車で40分ほどのTartuという場所に行きました。ホストマザーの生まれ育った場所でもあり、町を車で案内してもらい、その後旧市街を散歩しました。特設のアイスリンクが作られていたり、巨大ツリーが飾られていたりと、とてもきれいでした。
最終日は、Tartu内にあるトリックアートの家に行ってきました。日本にもよくあるトリックアートですが、ここは下の写真のように実際に家が上下逆に建設されており、中の家具も全て逆さまに設置されていたのです。建物内ではバランス感覚を保つのが難しくふらふらしてしまいましたが、沢山の写真を撮ることができ、とても楽しかったです。
ChoCoKooでのチョコトリュフ作り
タリンで一番有名なチョコレートのお店で、トリュフ作りを経験することができました。プログラム時間は約3時間で、初めにカカオについての講義を受け、そのあとに試食や実際に作る体験をさせてもらいました。講義はエストニア語で受けたのですが、数か月の勉強の成果もあり、大まかな内容を自力で理解することができ、質問をすることもできました。その後、私はホワイトチョコを使いトリュフを作りました。隠し味には、シナモン、オレンジフラワーウォーターを入れました。トリュフを作ったことがなかったので、隠し味のタイミングやテンパリングなどを教えてもらい、これもまた貴重な体験となりました。
店の内装を見たとき、どこかで見たことがある気がするな、、、と感じていたので、インスタグラムで検索すると、エストニアに来る前にエストニアの記事を投稿しているアカウントをフォローさせてもらっていたのですが、その団体と密接な関係にあるチョコレートのお店であることが分かりました。チョコレートについてのオンライン講座なども行っている団体のアカウントで、自分もやってみたいなと思っていたのですが、まさかこうして体験できるとは思っていなかったので、とても驚き嬉しかったです。
学校生活について
これまでの私の投稿であまり触れることのなかった学校生活ですが、今回少し詳しく書いていきたいと思います。私の時間割は以下の通りで、選択授業や空き授業が多く、仕組みは日本とは大きく異なります。
私の学年は、言語クラスと理系クラスの2つに分かれていて、私は言語クラスに通っています。一クラスは26人ほどで男子の方が少し多いです。それぞれのクラスに、日本のようにホームルームクラスはなく、登校後、直接1限のクラスに向かいます。1コマは45分で1コマごとに10分の休み時間、5限終了後に20分の昼食休みを挟みます。空き授業の間は廊下におかれている椅子に座り、勉強をしながら過ごしています。
<英語の授業>
2月から所属クラスを変えてもらい、一番上のクラスで授業を受けています。基本的に全て英語で行われますが、言葉の意味の説明はエストニア語で行われます。このクラスの人たちの英語力は高く、文法も私にとってはハイレベルのものを行っています。文法の単元ごとにプリントが配布されるので、それを各自で解いていき、解説後、単元テストを受けるというサイクルが約3週間で行われています。このサイクルと同時進行で、B5裏表分の物語の内容理解を行い、2週間で文章をすべて暗記し、先生の前でプリントを見ずに読み上げるテストがあります。これは、Retellテストと呼ばれ、英語の授業がスタートする小学2年生から始まります。難しい表現を覚えるのは私にとって大変でしたが、沢山練習したこともあり、新しい表現を学ぶことができ、さらに先生からはAをもらうことができました。
<化学の授業>
基本的にどの教科でも同じなのですが、先生はほとんど黒板に文字を書かず、口頭での説明のみで授業が進んでいきます。化学の場合、化学反応式のみが黒板に書かれていくので、授業中寝ていては何も理解することができません。また、一年のみで理論化学、無機化学、有機化学の範囲を終えるそうで、かなりのスピードで授業が進んでいきます。友達にこの授業のことを聞くと、この速さでの口頭授業で深くまで理解するのは難しいそうです。テストは単元ごとに行われ、日本のテストの量と比較すると少ないですが、筆記の問題が多い印象を受けます。化学の先生は英語ができるので、私はみんなとは違う単元を勉強し、特別に作ってもらうエストニア語でのテストに、英語で答えていくという不思議な形でテストを受け、成績を貰っています。
<エストニア語の授業>
私の学校には私以外に留学生はいないのですが、Grade6と8に海外国籍を持つ生徒が5人いるので、その生徒と一緒に特別講座を受けています。英語が話せない先生なので、生徒同士で助け合いながら理解を深めています。初めの3か月は、彼らと同じ教科書を使うことすら難しかったのですが、オンライン期間の勉強の成果があり、今では内容が理解でき、発言もできるようになりました。
<デジタルの授業>
週に計6コマあるデジタルの授業は、選択したい人のみの追加の授業でgrade10から始まります。1年を通しての目標は、アプリを1つ作ることです。この授業は全て英語で行われ、専門としている先生が教えに来てくれます。月曜日と火曜日は、ウェブデザインについての授業が行われ後半には、実際にFigumaなどのアプリを利用しながら、個人のプロジェクトを進めていきます。水曜日には、プログラミングの授業が行われ、Glitchというアプリを使いながら、基礎を学んでいきます。約2週間で個人のプロジェクトを進め、そこまでで学んだことをNotionにまとめて提出します。そのあとの2週間では3,4人のチームに分かれチーム課題を行います。チームの課題ではそれぞれが、プロダクトオーナー、デザイナー、プログラマーとなり仕事を分担して取り組みます。毎回課題が変わるのですが、今回はチームの一人のプロジェクトを改善し提出することが課題でした。これは、チーム課題に取り組んでいるときの写真です。
初めは内容が難しすぎたため、理解ができませんでしたが、この分野に興味を持ち始め授業外でも勉強を始めたこともあり、今では一番好きな授業となりました。
<昼食について>
学校には無料の食堂があり、そこでご飯を食べることができます。メニューは日替わりで、スープの日や、ポテトとお肉の日などがあります。この写真は、連休前の少し豪華な日だったため、ケーキもついていました。
簡単にですが、エストニアの学校について理解してもらえたら嬉しいです。私の通っている日本の学校と比較して感じることは、日本の学校の方がそれぞれの単元について深くまで解説してくれるということと、授業がゆっくり進んでいくということです。日本では、英語以外の語学を学校で学ぶことは基本ありませんが、エストニアでは英語のほかに、必修でロシア語ともう一つの言語(私の学校ではドイツ語、スペイン語、中国語から選択可)を学んでいます。新しい語学を学ぶことは難しいことですが、沢山の言語を学べるのはいいなと思います。
最後に
今回は長くなってしまいましたが、私の体験談を読みエストニアの冬と学校生活について、少しでもイメージを持っていただけたら光栄です。2月下旬に1週間の連休を挟み、再びオンライン授業が始まります。どのくらいオンライン授業が続くかは未定ですが、新しく興味を持ち始めたことがいくつかあるので、それらを調べたり、ホストファミリーとたくさん話す時間に当てたいと思っています。生活に慣れ、気が緩み出す時期だと思うので、もう一度気を引き締め、留学生活を充実したものにできるように、折り返しの半年も頑張ります。
(文章・写真 2020年エストニア派遣H.Y.さん)
2020年エストニア派遣H.Y.さんの留学体験記はコチラ。
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