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【高校生交換留学体験談】M.Rさん(フランス派遣)

更新日:2020年10月26日

EILの奨学金制度の一つ、「EIL留学生奨学金」は、派遣国において交換留学生としての活躍が期待される生徒のための奨学制度です。奨学生の皆さんには、プログラム終了後に体験談を提出いただいています。


本日は、2019年度の奨学生に選ばれた、フランス派遣生M.Rさんの留学体験談をご紹介します!

 

留学した人の中には、留学で得た最大のものとして、語学

力、視野が広がったこと、またコミュニケーション力などを挙げる人も多いだろう。しかし、留学を終えた今、私が自分の最も成長した部分や得たものを挙げるならば、フランスでできた友達と自分自身や周りのことについて深く考える力の二つだ。今現在でもつながりを持つ、留学の時にできた友達は、日本の友達よりも関わった時間が短いものの、昔からの友達のように親しい関係を築くことができた。また、留学中の私は、自分自身について考える時間やひとつひとつ物事について考える時間が日本にいるときに比べてはるかに多かった。この二つのことが成長したのには、この二つのことが関係していたからだと私は考える。


留学当初、私が留学中の人間関係について持っていた感情としては、さまざまな人に出会えるという期待とその人たちと上手く付き合っていけるかどうかの不安という対極のものだった。留学先の高校に初めて行った日、私は緊張であまり話せなかった。そして、自分から行動することができないまま一週間が過ぎたため、このままではいけないと決心し目標を立てることにした。それが、朝の一時間目が始まる前に、自分から最低でもクラスの友達、十人には挨拶をしてBise(ビズ)をして、少し会話をするという目標だった。

Biseとは、フランス挨拶の方法で、あいさつをするときに頬と頬をくっつけて「チュ」という音を鳴らすことだ。フランスは挨拶を重んじる国で、家族間ではもちろん、親しい間柄の人は必ずBiseをして相手の状況や体調を聞くので、クラスに早く馴染めるようにするために、フランス文化に溶け込むことが最善な方法だと思いこの目標を立てた。初めのうちは、なかなか達成できない日もあったが、一か月すぎる頃にはクラス全員の女子とは毎朝挨拶をし、ゆっくりだが、会話ができるようになった。

また、会話をする方法も工夫をして、自分の苦手な分野を改善することを意識した。初めのうちは話を理解できるようにするために、会話の内容としては相手に質問を投げかけることで、相手の返答を聞くことメインとして、リスニング力を高めようとした。少し経った頃には、スピーキング力をつけられるようになりたいと思い、自分が詳しい話題やフランス語の単語を多く知っている話題に持っていき、コミュニケーションをすることを心掛けた。例えば、陸上をしている友達には、私も陸上をしていたことを伝え、「この地域の陸上部クラブについて教えてほしい」とお願いすることで、相手の話を聞くリスニング力を鍛えた。さらに、フランスに行く前に自分に関係することについての単語を調べていたので、自分の知っている単語の多かった陸上の話しでスピーキング力を鍛えようとした。

そうした作戦を用いて周りの人にかかわって行くうちに、グループも定まっていき、仲の良い友達の相手には間違いを恐れずに自分から会話することができるようになっていった。そこからは、友達との町へのお出かけや、ホームパーティにも積極的に参加し、周りの人との距離が一気に縮まったと思う。

もともと人見知りで、人前で話すことが苦手だったり、フランス語を間違えることを恐れたりして、話すことをためらっていた私にたくさんのアドバイスをくれて、助けてくれた友達だ。やさしく受け入れて、たくさんの愛情を注いでくれた。フランスは愛情表現をする国だというイメージは前からもっていたが、実際に愛情表現をされる立場になったとき、日本ではあまり感情を表に出さなかった私も気持ちをはっきりと表現することを好むようになった。このように、フランスで出会った友達は日本との友達とは関わり方も、距離感も違うところが多いが、フランスの友達とは日本で日本人のように暮らしてきた私が、初めてフランス人としてのありのままの自分で接することができた、心を許せる一生の友達だ。これからも連絡を取り続けて、友達が日本に来たり、私がフランスに行ったりするときはまた楽しい時間を一緒に過ごしたいと思っている。


二つ目に挙げた、思考力、考察力などの考える力について最も変わったと感じたのは、進路についての考えだった。日本にいるときは良い大学にいって、よいところに就職して、安定した生活を手に入れることが第一だった。日本での、毎日の授業の勉強もテストに向けてのもの。大学入試を見据えた勉強をしてばかりいた。当時はそれを疑問に思うことはなかったし、先生たちからも大学入試で高得点をとることを目標にした勉強法を教わっていたため、それが正しいことだと思い込んでいた。しかし、フランスでの、知識を得る勉強、将来のために役に立つ勉強、実践のための勉強をして行くうちにゴールは大学に入ることではないというあたりまえのことに気づかされた。大学入試が専門分野を学ぶスタートだと分かっていながら、大学入試での成功のためだけにひた向きに勉強していた自分を恥ずかしいと思った。

教育面においてのフランスは、日本とは正反対で、自分の言葉で説明をする力を試すテストがほとんどだった。そのため、フランスでの授業は自分の言葉でトピックを説明させたり、図や表を読み取るなど実践的な勉強をしたり、経済学の授業では弁論を行ったりするなど、日本の暗記がメインの勉強とは異なる部分が大半であった。また、ほとんどの教科でプレゼンテーションを行う機会が得られ、人前で自分の意見を分かりやすくまとめて、話す経験が多くあると感じた。また、フランスでは専門分野でない授業も、知っておくべきあたりまえの知識として学ぶことが多い。例えば、歴史とは、日本ではテストに答えるために一生懸命、暗記をする科目であるが、フランスでは一般的な知識として歴史の流れを知って、教養の一つとして頭に入れておく、というような授業だった。そのため、テストでも、ある題に基づいて、歴史的説明を加えながら、自分の言葉で出来事を説明する小論文を書かせることが多かったのに加え、授業では知らなかった歴史だけでなく、その歴史の裏話や豆知識のようなことを知ることができたと。

このようにフランスでは学んだ知識をもとに、考えを自分の言葉で述べる機会が多かったため、さまざまなことについて考える力を培うことができたと思う。それは自分自身の将来の夢や、周りの人との人間関係などの個人的な問題も、日本全体の教育など、広範囲での問題点についての考察する力も得られたと思う。

私には、留学に行く前の目標の一つとして、将来の夢、または興味のあることを見つけるということがあった。そして、いざフランスに行ってみると、興味のある分野ができたどころではなく、さまざまな分野に興味が出て、ひとつのことにこだわらず、まわりのことをすべてに関心の目を向けるようになった。それは学校でのひとつひとつの授業での学びが多かったからだ。現在、私は、法学、経済学、哲学などの文系分野に加えって、工学、医学などの理系分野にも興味がある。これについて、さらに将来の夢が決まりづらくなったではないか、文理選択が難しくなって、逆に選びづらくなったのではと思う人もたくさんいるだろう。そして、そのアドバイスはどちらかといえば、マイナスな面だ。しかし、私個人の意見としては、プラスの考えを持っている。なぜなら、興味のある分野が増えるということは将来の選択の幅が広がると考えることができたからだ。そして、今すぐに将来の選択をしなくてもよいと考えるようにもなった。海外でダブルメジャーを取る人が多いように、興味のあることにはすべて挑戦しても手もいいのではないかという考えが、留学後の進路の結論となった。今でも、進路について悩んだり、考えたりする時間は多いが、それを考える時間が多ければ多いほど、将来が楽しみであるし、自分自身の成長にも繋がると思う。

現在、高校生活を送る私はクラスでの人間関係、日本の教育、将来の夢など、さまざまなことについて考えすぎといっていいほど考える時間が多い。留学に行く前から頭の中でたくさんの物事を考える性格ではあったのだが、留学に行ったことによってさらにその時間が増えたと感じる。

フランスでは友達同士で世界の経済や政治、また環境問題について議論をする時間があった。それは、日本の学校のように先生に言われて行うものではなく、休み時間などを利用して自主的に行うものだった。一年間を通してのこの経験は私に身近な人と弁論をして、考えたことを自分の言葉で説明する楽しさを教えてくれた。

これらの、私が留学をしたことで得られた友達と考える力には少なからず関係があったのだと留学後に気づいた。友達との議論において、さまざまな考え方を吸収し、自分の言葉で表現すること。それが今の私の考える力を培った。逆に、今まで得た知識をもとに、考察することで、どのようにしたら周りの人との関係を築けるのか、作戦を練ることができた。これら二つのことは、私がフランス留学で得た、最も価値のあるものであると言え、これからの日本の生活でもっとも活用していくことができるものだ。留学中に得ることができた経験の全ては、これからの私の人生の励みや誇りになり、これから乗り越えていかなければならない壁を超える助けになると信じている。

(写真・文/2019年度フランス派遣生 M.R)

 

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