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体験するからこそ、受け取れる情報がある 田中祥平さん(2011年アイルランド派遣)

 これまでに数多くの人たちが高校生交換留学プログラムに参加してきました。OB/OGたちの進路やキャリアは多岐に渡っており、それぞれの分野で活躍し、社会に貢献しています。


 今回インタビューを行ったのは、2011年にアイルランド派遣プログラムに参加された田中祥平さんです。田中さんは大手IT企業で勤務をされています。今回田中さんに高校時代の留学経験がどのようにその後の歩みに影響を与えたのか伺いました。

 

交換留学に参加しようと思ったきっかけを教えてください

 中学時代は英検取得に力を入れていました。というのも、私には2つ年上の兄がいるのですが、兄への対抗心が強く、彼が中学卒業時点で持っていた準2級を超えて、2級を取得しようと頑張り、合格しました。中学の間に英検2級はそれなりのレベルだと思いますが、取得はしたものの、英語を喋れるようにはなっていないな、と感じました。やはり英語を喋れるようになりたい、と思って考えたのが高校交換留学になります。

 兄がすでに交換留学に参加していたこともあって、留学に対するハードルは低かったと思いますし、親も反対はしないだろうな、という目算もありました。


 高校1年で留学に行くために、中学3年の夏には交換留学の選考試験に合格したので、高校が決まるよりも先に留学参加が決まりました。なので、高校の見学に行く際等には、留学にあたって単位認定がされるかどうかなど相談をした記憶があります。


派遣国にアイルランドを選んだ理由はなんですか?

 通っていた小中学校のプログラムでイギリスに行く機会があり、イギリスに渡航したことが何度かあったので、イギリスに対して親近感がありました。ただ、イギリスは1学年の留学先の選択肢がなかったので、お隣のアイルランドに決めました。

 また、私はバイオリンを習っていた関係でケルト音楽に馴染みがあったことも、アイルランドに決めた理由の1つです。


高校留学で苦労したこと・大変だったことはなんでしたか?

 やはりアイリッシュイングリッシュには苦労しました。前述の通り、中3時点で英検2級は取得していましたし、それなりに英語には自信がありました。私のホストファミリーはこれまでにも何人も留学生を受け入れた経験のあるファミリーだったので、ファミリーのほうが私にわかるように話してくれたので特に問題はありませんでした。ただ、学校に通い始めて、先生が全体に対して何か話をするのが、全然何を言っているのか理解できませんでした。1対1であればなんとかなるものの、現地の人たちの通常の英語のスピードに慣れて、理解できるようになるまでに3か月がかかりました。それまでは宿題が出ているのはわかっても、宿題の内容がわからないような状態だったので、友達に聞いて確認をして、と助けてもらっていました。


 また、ホストファミリーは子どもが4人いて、ホストファザーは海外赴任していたという環境で、忙しいファミリーでした。お手伝いの一環でご飯をつくるにしても、5~6人分という量ですから、これはなかなか大変でした。食べ物にしてもお菓子にしても、秒速でなくなっていくのは圧巻でした。


高校留学で一番思い出に残っていることはなんですか?

 授業や部活とも異なるのですが、学校で希望者を募ってミュージカルを行う機会がありました。友だちから「自分もやるから一緒にどう?」と誘われ、「ダンスなんてやったことないなー。でもやってみるか」という感じで参加することになりました。そもそも学校で行うミュージカルですから、それほど本格的なものだとは思っていなかったんです。

 ところが、外部からダンスの先生がきて教えてくれるような、本格的な内容でした。私はダンスと歌だけの役だったのですが、放課後に友だちと一緒に過ごす理由ができましたし、文化祭みたいな感じでみんなで練習して取り組むのは楽しかったです。


 また、アイルランドではトランジッション・イヤーという学年に配属になりました。この学年は、その後の専門を決めるために、次の年から選べる教科を全部ちょっとずつ学んでみるという、アイルランド特有の学年になります。木工や鉄加工、演劇など、日本では教科とならないような授業をいろいろ受けることができたのも面白い体験でした。



帰国から大学進学までの進路選択について

 高校での休学扱いと進級扱いのどちらにするかは選ぶことができました。私の1つ下の学年から”ゆとり”ではなくなるということで、学年を落とすと大変かもしれないと思い、留学中の単位を認定してもらい、進級しました


 海外の大学進学を考え始めたのは帰国した頃だったと思います。日本の大学のオープンキャンパスにも、帰国した高校2年の夏頃にいくつか行ってみたのですが、英語も喋れる環境で、かつ好きな数学をやれ、ここで学びたいと思えるような大学が見つかりませんでした。


 アメリカの大学も検討しましたが、費用面で難しいと感じたので、イギリスの大学で考えました。どうせならレベルの高い場所で学びたいと思い、大学ランキングみたいなものを参照しました。その際に、エジンバラ大学はとんでもない苦労は強いられなさそうだけれども、レベルは高いとされていました。

 一方、イギリスの大学は入学するのが大変な側面があります。イギリス人はA levelという大学入学に必要な試験で求められる成績を収めることが必要なので、留学生は多くの場合すぐに学部入学とはならず、予備校のようなところでA levelの勉強をするか、ファウンデーションコースと呼ばれる 1年間の大学準備課程を修める必要があることが多いです。

 また、一般的にイギリスの大学ではIELTSという英語資格試験のスコアが求められるのですが、この試験料が高かったので、何度も受けられる試験ではないと思っていました。高校2年の3月くらいに受けてみたところ、スコアは7.0。エジンバラ大学で求められるスコアを超えることができたので、この1回の受験のみで入学が認められ、さらにはファウンデーションコースの履修も免除されました


高校留学と大学留学の違いについて教えてください

 高校留学と大学留学は本当にまったく異なる体験でした。当時、スマートフォンがまだなかったということもあると思いますが、アイルランド留学中は日本語に触れる機会がほとんどありませんでした。日本人観光客がいるような場所でもありませんでしたから、現地の生活にどっぷり浸かり、帰国時にはむしろ日本語の方が不自由なくらいでした。


 一方でエジンバラはある程度大きな都市ですし、エジンバラ大学には他にも日本からの留学生がそれなりの人数がいました。大学生ということで自由度も高いため、日本語に触れたいと思ったら際限なく触れられてしまう環境と言えます。また、クラス単位で動くわけではないので、大学内での友だちづくりは簡単ではありませんでした

 英語でコミュニケーションを取ること自体や、話しかけることは高校留学で培ったものがあったので、その経験を駆使して人間関係を広げていきました


 大学4年の際に卒業発表があり、その際に発表した内容が面白く、もう少し学びたいという気持ちになったため、大学院に進むことを決めました。今度は日本の大学院で学ぼうと思った際に、学びたいと思った逆数学を研究している教授が東北大学にいることがわかり、東北大学で修士号を取得しました。博士課程まで進むことも考えはしましたが、これを一生やっていくほどの熱量は自分の中にないと判断し、就職することにしました。


これまでのキャリア変遷について教えてください

 エジンバラ大学で学んでいた際に、コンピューターサイエンス系の授業を履修し、プログラミングに触れたことがありました。

 そうした関係で、プログラマーになろうと思って就職活動をしましたが、3,4つ大学の授業を履修した程度では未経験という扱いだと考え、未経験でも応募可能だった会社が今勤めている会社です。

 取引先企業の要望を受けて、プログラム開発を行う部署で働いていて、去年まではAI関連の仕事をしていましたが、今はもう少しマネジメント業務に軸足を移しつつあります。今後もAI関連に関わっていきたいと思っています。


高校留学の経験は今の自分に、どのように影響を与えていますか?

 高校留学に行ってなければ、海外の大学には行かなかっただろうと思います。そうした意味で私の人生においては大きいですし、もう少し人間的な話をするならば、チャレンジすることへのハードルが下がったと思っています。「できるかどうかわからないけれども、一回やってみよう」「あれほど英語がわからなくてもなんとかなったから、これくらいは大丈夫だろう」といったような意識は高校留学で培われたものです。

 また、フットワークも軽いという自負があります。急な誘いであっても、それが大阪だとしても、「それなら近いな」と思える範囲が広いことは、人生を豊かにしていると感じます。



留学を考えている高校生へのメッセージをお願いします

 最近目にした記事で「体験することはタイムパフォーマンスが悪い」という内容が書かれていました。ずいぶんと攻めた記事だなと思いましたが、そう思う気持ちもわからなくはないです。ただ、留学を”体験”した身としては、留学はさすがに行ってみないとわからない。自分で体験しないとわからない。受け取る情報量が違うものだと思っています。

 タイムパフォーマンスは悪いのかもしれませんが、本質的ではないかもしれないような、圧縮したらそぎ落としされてしまうような小さな情報の中に、自分が大事だと思えることや、自分を変える要素みたいなものが落ちていたりします。仮に、自分がアイルランド留学せずに、留学した気分だけ味わったとして、その後イギリスの大学院に進学しただろうか、と考えてみたら、しないだろうと思います。


 実際に英語でコミュニケーションを重ねてきた経験があるからこそ、英語を喋っている時の自分の性格は、日本語を喋っている時と違うと気づいたり、英語で夢を見て嬉しくなったり、そういう積み重ねで人生が変わってきたんだと思っています。ですので、高校生の皆さんにもそういう体験を積んでいって欲しいですね。


田中祥平さんプロフィール

兵庫県神戸市出身。

兵庫県立兵庫高等学校1年時の2011年夏から、アイルランドへ留学。帰国後2年次に復学し、2014年秋にエジンバラ大学理学部数学科に入学。2019年4月に東北大学大学院理学研究科数学科修士課程に進学。修士号取得後、大手IT企業就職。現在に至る。



 

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