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「海外でも生きていける」という選択肢を持つ 北川拓也さん(2001年アメリカ派遣)

更新日:2021年3月29日

  これまでに数多くの人たちが高校生交換留学プログラムに参加してきました。OB/OGたちの進路やキャリアは多岐に渡っており、それぞれの分野で活躍し、社会に貢献しています。

 今回インタビューを行ったのは、2001年にアメリカ派遣プログラムに参加された、北川拓也さんです。北川さんは交換留学プログラム参加後ハーバード大学へ進学され、現在は楽天株式会社にて常務執行役員としてAIの責任者を務めていらっしゃいます。

 高校時代の留学経験がどのようにキャリアに影響を与えたのか、そして今高校生が海外で出るべき意味について伺いました。

 

北川拓也さんプロフィール

2001年アメリカ派遣

兵庫県西宮市出身

灘高等学校1年次の2001年夏よりアメリカに留学。帰国後、2年次に復学しハーバード大学に進学。数学、物理学を専攻し最優等の成績で卒業。その後、ハーバード大学物理学科にて博士課程修了。現在は楽天株式会社常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)。




世界のど真ん中であるアメリカへ行きたい


Q.交換留学プログラムに参加しようと思ったきっかけを教えてください。

 私は、子どもの頃から、自分が大人になった時に自分自身が世界の中心にいないと意味がないと思っていました。中学生になる前にWindows95が発売され、中学2年生の頃にビルゲイツの本を読みました。宇多田ヒカルがデビューしたのが同時期で、この2つのことは私に大きな影響を与えました。その頃の私は、「どうやら日本は世界の中心ではない」ということを感じ始めていて、何はともあれ世界のど真ん中であるアメリカに行こうと思ったのが、留学をするきっかけでした。大学留学でもいいのではないかとも考えましたが、大学進学まで待つことに意味がないと思い、高校からアメリカに行くという結論になりました。そういう意味では、アメリカに行くということがまずあって、その手段として交換留学があったという感じです。


Q.進学校且つ理系でしたが、留学に対して躊躇はありませんでしたか?周囲の反応についても教えてください。

 正直、何も心配はしていなかったですね。「アメリカに行く」ということをまず決めたので、復学後のこととか、受験のことまで考えていなかった。ただ、親は違いました。ご存知の通り灘高校は進学校なので、高1、2年の2年間で高3までの学習範囲を終えてしまいます。勉強のレベルも高い。高1の夏から高2の夏の1年間を空白にしてしまったらまずいのではないかと親は心配していました。学校側も賛成も反対もなく、といった感じでしたね。

 ただ、私の中ではすでに決めていたので、気持ちが揺らぐことはありませんでした。



見たことのない景色、初めての味わい


Q.留学生活で苦労したこと・大変だったことを教えてください。

 元々、私は子どもの頃から友だちをつくるのが得意ではありませんでした。正直、友だちを作ることを重要視していなかったです。英語は得意科目ではなかったのですが、その割に勉強はちゃんとしていたので、ある程度話すことはできました。とはいえ流暢に話せるわけではないし、そもそも友だちのつくり方がわからない。なので、留学当初は、友だちづくりやコミュニケーションには苦労しました。

 留学後、友だちができたのはサッカーがきっかけでした。元々日本でもサッカーをやっていました。ホストスクールでサッカー部に入ったことで友だちをつくることができました。現地の友だちと一緒に取り組めるスポーツがあったことは本当によかったと思っています。

 アメリカでは、部活がシーズン制でサッカー部の活動は夏だけでした。ボールを蹴れるんだから、とアメフト部にも誘われたのですが、興味がなかったので断りました。ホストスクールが地元の大学と提携していたので、その制度を利用して、冬の間はその大学で物理や数学、心理学などの授業を受講させてもらっていました。


Q.逆に一番思い出に残っていることはなんですか?

 テキサス州での本格的な留学生活がスタートする前に、ウィスコンシン州で1ヶ月間の事前研修を受講しました。ウィスコンシンって土地が広大で地平線が見えるんですよ。それまで私は地平線を見たことがなくて、その景色はいまだに忘れられません。また、研修中のホストファミリーが「今日はアイスクリームを食べさせてやる」と言って、裏庭で採ったブルーベリーでアイスクリームを作ってくれました。元々食に興味がない人間だったのですが、その自家製のアイスクリームはすごく美味しかったことを覚えています。味もさることながら、国や文化が違うと「ご馳走」の概念がこれほどまでに違うものなのかと衝撃を受けましたね。

 あと、ホストスクールは交換留学には珍しく、キリスト教系の私立高校でした。冬にテキサスの私立高校を対象とした科学コンテストがありその告知をちゃんとキャッチできていなかった私を友だちが勝手にエントリーしてくれていました。その大会には軽い気持ちで参加したのですが、結果的に地区大会を勝ち抜き、州大会でも優勝したのも良い思い出です。



交換留学の経験があったからこそのハーバード進学


Q.交換留学の経験は今の自分にどのように影響を与えていますか?

 交換留学に参加しなかったとしても、どこかのタイミングでアメリカに行っていたとは思います。でも、高校1年で交換留学に行かなければ、ハーバード大学に進学しようも思わなかったかもしれないし、実際に進学するとは思いませんでした。また現在、私の部署では数百人、海外の方がいるのですが、こうしたグローバルマネージメントができるようになったのは、もちろんハーバードでの経験が大きいです。しかし、その原点は交換留学にあると言えます。


Q.ハーバード大学進学の経緯について教えてください。

 私が高校生の時に「ビューティフル・マインド」という映画が公開されました。プリンストン大学が舞台の物理の天才の話なんですが、その影響をすごく受けました。その映画を観た時には、もう絶対にプリンストン大学に進学するぞ、と思ったものです(笑)。結果的にシカゴ大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、プリンストン大学、そしてハーバード大学に合格しました。もちろん私はプリンストン大学に進学するつもりでした。その頃、私には杉本さんという仲の良かった友人がいて、そのお母さんが実業家だったんですね。その彼女が進路の話を聞いて、「どうせだったら一度見に行って来たらどうか」と渡航費等を支援してくれたんです。実は杉本さんのお母さんもイギリスに留学経験があり、経済的に大変苦労をされたそうで、その時にイギリスの富豪に、「将来機会があったら、同じようにpay forward(別の人に恩を送ること)してくれたらいいから」といって支援をしてもらった、という経緯があったみたいですね。こうやって御恩というのはつながっていくんだなと、大変感謝いたしました。

 私はMIT、プリンストン大学、そしてハーバード大学に実際に見学に行きました。百聞は一見に如かずとはよく言ったもので、結局ハーバードの方が気に入って、進学を決めました。見に行ってなかったらプリンストンに行っていたかと思うので、人生は大きく違ったと思います。そういう意味で、私は杉本さんのお母さんのお陰で理論物理学者にもなれたし、楽天でAIの責任者にもなれたんだと思います(笑)。これからも受けた恩を社会に返していきたいですね。



交換留学とは、自分の中の選択肢を増やすこと


Q.交換留学を検討している高校生にメッセージをお願いします。

  とにかく行ったほうがいいです。復学後の生活や受験、進路のことなど悩む要素はあると思いますが、行くことを決めてからどうするか考えたらいいと思います。

 私が留学した約20年前、まだ日本は世界の中心の近くにいましたし、そのまま良い位置をキープする希望も多少はありました。残念ながら今はかなり厳しい状況です。よく言われるように、これからの日本は更に少子高齢化が進み、また人口減少も避けられないでしょう。世界の中で、益々日本は存在感を希薄にしていくことは間違いないです。もちろん私を含めて日本をもっと良くしていこう、という気持ちの人はいますし、そういう気持ちを持っている人はそれでいいでしょう。ただ、日本が苦しくなっていくというのは、経済的に苦しいということだけではなく、精神的なことも含まれます。そういうこれからの時代を生きていく上で、「海外でも生きていける」という選択肢を自分の中に持つことは精神的な安定にも繋がります。逆にその選択肢を持たないことはリスクとさえも言えます。


 高校留学の1年はいろんなことがあるでしょう。楽しいことばかりじゃなくて、大変なこと、苦労することもたくさんあります。でも、今や人生100年時代です。100年という長い人生の中で、高校時代の1年間をそういう1年にしておく、というのはすごく価値があることだと思います。

 だから、とりあえず行きましょう(笑)。行くと決めたら後のことはどうにかなりますよ。

 

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