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【高校生交換留学体験談】近藤由菜さん(アイルランド派遣)

更新日:6月27日

 2023年7月よりEIL高校生交換留学アイルランド派遣プログラムに参加していた近藤由菜さん。今回、ご自身の留学体験を多くの方と共有したいと、レポートを書いてくれました。


 10ヵ月間の留学は貴重な思い出で溢れていたそうです。そんな留学生活を振り返っての経験談を書いてくれました。ぜひお楽しみください!

 

 2023-24年度、アイルランド派遣の近藤由菜です。小学生の頃からの大きな夢だった高校生での交換留学で、私はアイルランドのリムリックとコークのほぼ境にあるとても人口が少ない小さな村ですが、1年中辺り一面、緑豊かな土地と牛や羊などをはじめとした多くの動物に囲まれており、また人々が皆が親戚のように親しく接してくれる温かい地域に住んでいました。

 今日は、そのような私の毎日小さなことから大きなことまでの発見と貴重な思い出で溢れた素敵な10ヶ月の留学生活について話そうと思います。


アイルランドについて

 人々の温かい心の持ち方に圧倒されました。アイルランドは移民を世界中からたくさん受け入れているため、他の国籍の人々に対してとても優しく、困っている人を見過ごせない、温かく心が広い国民性で、沢山の優しさにいつも助けられていました。学校でも最初のうちは私の方向音痴のせいで小さな校舎の中でも道に迷ってしまったり、アイルランドの英語が訛りが速すぎて、何を言っているのか全く内容が理解できなかったり、そんな時に学校にいる誰に聞いても1から丁寧に教えてくれました。アイルランドの人々は基本的に明るく陽気な性格、知らない人でも昔からの友達かのように仲良く話していました。いつでも分からないことがあれば聞けば誰でも快く教えてくれ、現地の人があちらから困ってるように見えた、など助けてくれることもしばしばありました。1人で立っているだけでも大勢の人が古くからの友達のように話しかけてくれるので、日本では見知らぬ人は危険と言われるかもしれませんが、私は個人的に誰とでも話すことが楽しかったので、新しい人々と知り合うことをとても楽しみました。また先ほど書いたように、アイルランドには少し強めの素敵なアクセントがあり、その地域や人々によって1人1人違うので、初めのうちは学校でも自分の周りが何か呪文を唱えているように感じました。ですがアイルランド英語は相手を大切に気遣い、思いやる表現がたくさんあることが有名で、mind yourself, sorry lads, what’s the story, cheers, thanks million, などの相手への配慮を大切にするようなアイルランド特有の素敵な表現を沢山使います。

 

 日本では時間をしっかり守ることが相手を思いやることの基本とされていると思いますが、アイルランドの人々は穏やか、それ故、時間に大変ルーズな性格のため、電車、バスは時間通りに来ないことがもう習慣になっています。15分前行動で時間に多く余裕を持つことは当たり前で、私が住んでいた リムリックのバスはよく遅れることで有名でした。もちろんいつもとは言えませんが2時間待つことは覚悟しておくべきだと思います。これは失礼な行いということではなく、誰も遅れることに対して文句を言ったり非難したりすることは全くなく、むしろ人に対しての労りの気持ちを大切にし、少しの間違いでも受け入れる寛容性のあるアイルランド特有の国民性に気づくことが出来ました。

 

 また、気候はアイルランドの数ある文化のひとつで雨が1週間に4,5日、1日の中で四季があると言われるほど天候がコロコロ変わる、全く予想できない気候ですが、人々はあまり天候の変化を気にせず傘を持っている人も天気予報をみる人さえ少なかったです。日本では雨季以外そこまでいつも雨が降る環境ではないので、天気がいつも悪いことに慣れるのに少し時間がかかりました。




学校について

 

 私の学校は全校生徒約300人の女子校で、イタリアやドイツをメインとした約8カ国から留学生を受け入れていて、1番多い時期で30人の留学生がいましたが、日本人留学生としては私が初めての受け入れでした。そのため、アイルランドの生徒や他の留学生達も私が初めて会った日本人だと言っていました。


 さて、学校の初日は新しい日々が始まることに期待で胸がいっぱいでしたが他の留学生にとって英語を話すことは基礎の基礎、初日から頑張るステージが違うことに衝撃を受けました。私は英語は小さな頃からずっと大好きでしたが、話すとなるとまた違った難しさがあることに気がつきました。そんな時にも大切なことは焦らず、常に笑顔でいることを心がけること。英語が堪能でも無表情で何を考えているかよくわからない人と、英語は少ししか話せなくてもいつも笑顔で全てのことに対して全力で取り組む人、どちらの方と友達になりたいと思うでしょうか。私は後者の笑顔を常に忘れずに過ごし、何でも楽しんで行えるような心持ちが留学生活を成功させることに繋がると思います。

 

 全ての授業が私にとって価値になるもので、得られたことが沢山あり、特に “religion“ 、宗教の授業が週に3回ほどあったことが印象に残っています。私の学校はカトリックの教えをとても大切にしていたため、3ヶ月に1回ほどは街の教会へ学校全体でお祈りに行っていましたが、この時間ではカトリックなどの宗教的なことを学ぶ授業ではありませんでした。この宗教の授業ではアイルランドや世界各国で作られた歴史的なドキュメンタリーやショートムービー、資料からその頃の国の社会状況についてみんなで話し合ったり、意見を出し合うことで社会問題や歴史についての自分の見解を深めることができました。特に私の学校には留学生がかなり多くいたため、学校の授業の半分ほどは留学生のみで行う形が多く、アイルランドの生徒との授業内での関わりが少ないことが問題でしたが、この授業ではどこの国籍も包括的にアイルランドからの、他の留学生たちからの、もちろん日本からの、など人によって大きく異なる、事に対する新しい見方や考え方を得る貴重な機会になりました。扱う内容も先ほど述べたように、アイルランドだけではなく他の国の事柄にも積極的で、時には自分の宗教について、または文化について書くという課題が出ました。私は、世界中の人々に知って欲しかった原子爆弾による被爆で亡くなったサダコさんの話を取り入れながら、千羽鶴、折り鶴の起源をレポートにして提出したところ、先生が1つの授業として取り扱ってくれました。私の父が広島出身だったこともあり、自分の口から日本の原子爆弾についての歴史や、折り鶴の文化を説明したかったので先生に自ら交渉し、プレゼンテーションを行う時間をいただきました。みんな興味を持ってくれ、折り鶴を作り、日本をテーマとした世界平和について考える良い機会となりました。

 私は特に信仰している宗教はなく、いわゆる無宗教でアイルランドの人々やほとんどの留学生は心の拠り所となる宗教の在り方をとても大切に、宗教は生活の一部となっているほどなので初めのうちは無宗教という考え方が人々に受け入れられるかとても不安でした。友達にも家族にも日本の宗教に聞かれたことが多くあり、英語でうまく自分の気持ちが表現できなかった初めの頃、何か誤解を生んでしまうのではないかと少し心配でしたが、自分なりに宗教について丁寧に説明することを心がけました。日本には2つ仏教と神道という宗教があり、考え方の違いから多くに派生している、私のような無宗教の人々も多いけれどそのような人たちにとっても宗教的な神々を敬う考え方は根強く生活様式に馴染んでいる、例えば、ご飯を食べるときに「いただきます」「ごちそうさまでした」、人に対してはもちろん、また教室、学校などをはじめとした道具や命がないものに対しても、常日頃から感謝の気持ちをもつ、また、私の祖父は創価学会の1つのリーダーであったことがあり、ここでは人のために良いことを行うことが全て自分に返ってくるという今の生活を大切にするという考え方で人に何かをさせる強制的なものではなく、自分の心の置き方を大切にするものである、と多角的な面から考え方を説明しました。友達や先生、家族も排他的に他の考え方を排除するのではなく、認めた上で興味を持ってくれ、沢山質問してくれたことが嬉しかったです。

 


 さて、私の学校は社会的なボランティア活動や宗教的な行事にとても積極的で、毎週〇〇weekというものが設定されており、これは1週間集中的に何かを行うことを設定し学校全体で自発的に、意識を持って活動することを学校が促進するためのものです。例えば、LGBTQ weekでは全校生徒、先生を含め虹色、またはいつもとは違う色の靴下を履くことで多種多様の在り方を実体的に知り、認め合い、LGBTQの考え方について深く考える機会を作ってくれました。また ”Seachtain na Gaeilge” というアイルランドの伝統的な音楽を祝う週には伝統的な楽器を使ったコンサートを学校で行いました。私は先生に頼んでtin whistleというアイルランドのフルートを学校全体の前で演奏できる機会をいただき、世界中で人気なジブリの「千と千尋の神隠し」から「いつも何度でも」と、アイルランドで「kesh jig」という1番有名な伝統的音楽の2つの曲を演奏しました。アイルランドの文化を知って挑戦してみるだけではなく、日本人の留学生としてアイルランドの楽器を通して、日本の誇れる音楽文化を多くの人々に紹介することによって互いに両国の繋がりを感じ、日本文化の広がりに貢献できたことをとても嬉しく思いました。


 また、ハーリングというアイルランドの国技である少し太めの木で作られたバットのようなもので野球ボールのようなものを打つ競技のクラブがありました。(ハーリングは男女の力の差が大きく影響するため、競技自体の名前が違い、女性版はカモーギーと呼ばれています)学校でのクラブの練習と言ってもアイルランドの大会で優勝するほどの実力を持つ本格的なもので、1年生の12、13歳の子と一緒に練習に参加していたのですが、体格的にも筋力的にも圧倒的にしっかりとしていて練習や試合の中で、毎回誰か必ず血を流すほどかなり激しく闘うことに驚きが隠せませんでした。すでに何年も共に練習してきた子達のグループへ入ることは大変な時もありましたが、練習を通して、皆に分からないことを沢山聞いたり、お喋りしたり、沢山私や日本について聞いてくれる中で、自分の学年の子だけではなく、他学年にも学校中に友達が作れたことが良い経験になりました。





 私は、多くの人にとって日本は未知の世界という認識を変えたいと思いました。しかし学校に留学生が多いことで、私たち1人1人を紹介する暇がなく、そのまま生活していたらただ留学生の中の1人という抽象的な認識になってしまうため、自分から行動を働きかけることが不可欠でした。先生に頼んで日本についてのプレゼンテーションを全校生徒の前で行ったり、音楽の授業で日本の曲をピアノで披露したり、アイルランドの楽器で日本の曲を紹介したり、宗教の授業では先ほど述べたように平和について扱っていたため、原子爆弾投下のプレゼンテーションを行い、折り紙の鶴の意味合いについて説明し、クラスのみんなで折り鶴を作り学校の玄関に平和の象徴としてじ飾ってくれました。


 また、“national day“ という学校にいる20を超える世界中の多国籍の生徒がその国の食べ物を紹介するイベントでは、浴衣を着て、小豆がない中で試行錯誤して自分で作ったあんこやジャム、クリームを入れたどら焼きと日本の沢山のお菓子、おもちゃや日本の文化や生活についての写真と説明入りのアルバムを作成し、紹介しました。沢山の人が興味津々で私のブースを訪れてくれて、アルバムに行列を作り、食べ物も一瞬で全てなくなってしまうほど美味しそうに食べてくれたのがとても嬉しかったです。



 学期の最後には、international student of the year という賞をアイルランドの学校から頂きました。これは学校生活の中で留学生として1番成果を出し、学校の取り組みに意欲的、積極的に貢献、参加したことを評価したもので、留学生活最後に努力を認めていただけた、留学生として栄誉のあるトロフィーを受け取らせていただいたことをとても光栄に感じました。


トロフィーを受け取りました!

家族について

 次に私の留学生活を私の1番側で見守っていてくれた私の大好きなホストファミリーについて書こうと思います。彼らは私を留学生としてではなく本当の家族のように温かく迎え入れ、私がやること全てに対して「ゆななら絶対にやり切れる!ベストを尽くして頑張って」といつも応援してくれたことが新しいことに挑戦する勇気につながったと思います。私はなるべく1人の時間を作らないよう、常にリビングルームにいて、家族との時間を大切にしていました。嬉しかったこと、困ったこと、頑張ったこと、今日行ったこと、全てを家族と共有していたので、毎日が実りのある日々、家族としての一員であることを感じることができました。どんな時でも私の味方でいてくれて、とても頼り甲斐のあるママと家族想いでいつも笑わせてくれる頼もしいパパ、ホストシスター3人と、ホストブラザー1人、犬6匹、猫3匹、モルモット3匹の大家族の家に住んでいました。特に8歳のホストシスター、メーガンとはいつも一緒にいて、私が夜自分の部屋や少し外へ行こうとすると、さらにはトイレへも着いてきて「ゆな!早く一緒に遊ぼう!」といつも声をかけてくれました。雨が1週間に少なくとも4日、また1日の中で四季があると言われているアイルランドでは天候が15分ごとに変わります。そのためメーガンとは折り紙や竹とんぼ、などの家の中で遊べるもの、また凧などの日本の遊びはもちろん、サイクリングへ行ったり家の前の緑に囲まれた長い一本道を散歩して牛や馬を見に行ったり、カモーギーの練習をしたり、10ヶ月間ずっと一緒に楽しい時間を過ごしました。また、ママがベビーシッターとして日中は6、7人の子供達を預かっていたおかげで小さな子供達と沢山話したり遊んだりする機会がありました。子供は比較的訛りが少なく、聞き取りやすい英語を話すので遊んでいく中で一生懸命会話を広げてみたり、ふとした瞬間に英語で何というのか聞いてみたり、みんなと沢山話したおかげで英語が上達したと言っても過言はないと思います。私は留学中一度も日本と電話をせず、たまに取る連絡も全て英語で行い、また日本人が全くいないことにより、日本語に一切触れず、英語を使わざるを得ないというとても恵まれた環境に身を置くことができました



 幸運なことにメーガンを含めた周りの子供達が折り紙で遊ぶことを気に入ってくれ、彼らが小学校の先生に頼んで私が折り紙を教える会を開く機会をいただきました。私は折り紙は日本で伝統的に愛されている、私たちにとって重要な文化の1つだということを説明し、カエルや紙飛行機などの実際に遊べる折り紙をみんなで作りました。小学校の子供達や先生と関わり、みんなが私たちの文化を楽しんでくれたことがとても良い思い出になりました。初めのうちはファミリーにとっても学校にとっても、ほとんど全ての人にとって日本文化は新しいものであったため、受け入れられるか不安なところもありましたが、文化の違いを楽しみとして積極的に知ろうとしてくれたのが嬉しかったです。






まとめ

 私は、留学中に多くの人との関わり合いを通して、自分の物事に対する考え方や心の持ち方が大きく変わったと思います。例えば、昔はダンスが自分の中で苦手なもの、少しやってみて出来なかったのでもう自分には一生合わないもの、と決めつけていましたが、まずは勇気を出して笑顔で挑戦してみると、踊ることで自分の気持ちが晴れやかに、清々しく感じるように、また大切なのは踊っている自分たちが楽しむこと、完璧に行うことが一番ではないことに気づきました。また、自分が今まで培ってきたもの、努力は世界でも通用するのだな、と改めて感じ、今まで何かに固執していたことが留学により主観的な考え方はもちろん、また客観的に自分を見つめ直す貴重な機会を得られました。また、困った時、不安なことがある時、もちろん楽しいこと、嬉しいこと、何でも一緒に留学を乗り越えてきた世界各国の友達と相談しあい、励まし合い、一緒に成長していくことで留学前に想像していたよりもはるか多くのかけがえのない友達を沢山作ることが出来ました。今でも留学中に出会った家族や世界各国から集まった多くの友達と毎日連絡をとり、またいつかみんなで再会できることを心から楽しみにしています。


 今回の留学では、やれることを先延ばしにせず、その時に自分から行動を起こして全て行うことの大切さ、笑顔は世界共通なことを学びました。頑張ってきた全てのことはこれからの人生の中で何か挑戦するときに大きな自信や勇気になると思います。努力で培ってきた英語力を将来の仕事で活かせるだけではなく、日本語以外でもコミュニケーションを取れるということは新しい考えを知り、自分の視野を広げることに大きく繋がると思います。

 留学へいくことをいつも応援してくれていた日本の家族、私の留学生活全般を支えてくださり、書類のことから履修のことから分からないことだらけの留学の中で沢山の質問にも快く丁寧に答えてくださり、準備を手伝ってくださった先生方、学校、出発前から留学が実りあるものになるようアドバイスを沢山くださった、OB、OGをはじめとするEILの方々、また自分を理解してくれ、心から自分のことのように励ましてくれた友達や親戚、自分をずっと支え、応援していてくれた全ての人々に伝えきれない感謝の気持ちでいっぱいです。人生の中で一生忘れないような、夢へ向かって大きな一歩となるかけがえのない素晴らしい経験をさせて頂き、心より感謝しています。

 ありがとうございました。

 

(写真、文:2023年度アイルランド派遣生 近藤由菜)

 

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​EILの正式名称は「Experiment in Intertnational Living」このサイトは、EILのプログラムを通じて国際交流体験をした人たちを「Experimenters」と称し、その体験やその後にどう活かされたかを紹介するEILのウェブマガジンです。

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