これまでに数多くの人たちが高校生交換留学プログラムに参加してきました。OB/OGたちの進路やキャリアは多岐に渡っており、それぞれの分野で活躍し、社会に貢献しています。
今回インタビューを行ったのは、1996年にアメリカ派遣プログラムに参加された瀬尾幸子さんです。瀬尾さんは現在、出版社・講談社に勤務され、FRaUという媒体のウェブメディア(https://gendai.ismedia.jp/frau)で編集を担当されています。
高校留学の体験が、今のお仕事にどのように影響しているのかを伺いました。
アメリカから発信される情報を直接理解したい
Q.交換留学プログラムに参加しようと思ったきっかけを教えてください。
中学3年生の頃、洋画が大好きだったので字幕なしで映画を見たいと思ったのがきっかけです。特にレオナルド・ディカプリオが好きだったことや、海外の文化やトレンドにも興味があり、彼らが発信していることを自分の力で理解したいという一心でした。
あとは学校があんまり面白くないというか(笑)、このまま高校に進学しても、ある程度高校生活が想像つくなと感じていて、新しい環境で自分を試してみたいと思っていたのもありました。
Q.派遣国をアメリカに選んだ理由を教えてください。
前述の通り、洋画やレオナルド・ディカプリオが好きで、英語による彼らの発信を直接理解したいと思っていたので、そうすると必然的に英語、それもハリウッドがあるアメリカ一択でしょ!という単純な理由からです。時、最新とされていたトレンドの発信源がほぼアメリカだったので、他の国はまったく考えませんでした。
苦い思いでも含めてすべてが人生の糧
Q.留学生活で苦労したこと・大変だったことを教えてください。
ホストファミリーとの関係に苦労しました。今となっては私自身が未熟だったことも一因だと思っていますが、当時はまだまだ世間知らずの15歳だったので、日本の家族とはまったく違うカルチャーにうまく馴染めず、また当時18歳だったホストブラザーとの関係についても、男兄弟がいなかった私にとってはハードルが高く、戸惑うことが多々ありました。
当時は本当に辛く、嫌だなと思うこともあったのですが、今となればそれによって親のありがたみを感じたり、他人とうまく生きていくために必要なスキルを学べたりと、日本にいるだけでは分からなかったことが体験できて良かったと思います。
ホストスクールでも発表の機会が多かったので苦労しました。そもそも英語がまだ十分にできない上に、人前で発表をすることや、自分の意見を言うということ自体に慣れていなかったので、周りからは「You’re too shy」とよく言われていました。500人近くいる全校生徒のまえでスピーチをしなければならない時があったのですが、本当に緊張してその時の記憶がほぼありません。ただ、今でも緊張することがあると「あのときに比べたら」と思って乗り越えられているので、得難い経験になったと感じています。
Q.逆に一番思い出に残っていることはなんですか?
高校留学は、苦い思い出も含めてすべてが良い思い出で、私の人生の糧となっていると言っても過言ではありません。なので「一番」を決めるのが難しいのですが、やってよかったと思うのはスポーツです。アメリカの高校ではシーズンごとに行うスポーツが変わるのですが、シーズンごとにバレーボールにラクロスと、チームに入ってプレイをしたのはいい思い出です。英語が流暢ではなくてもスポーツを通して交流ができたり、仲間意識も高まりましたし、日本の学校とは比べ物にならいほど広いグラウンドでトレーニングをすることで心身ともに鍛えられました。これから留学するみなさんにもぜひ何かスポーツに限らず、チームプレイの活動に参加することをお勧めしたいです。
編集者として働く中で感じる留学経験の影響
Q.帰国後の進路選択について教えてください。
私は高校1年生で留学して、帰国後は休学扱いで高校1年生に復学しました。そのため、大学受験までは時間がありました。正直、何か高い志があったわけでもなく、夢も特になく、レオナルド・ディカプリオが好きで留学するあたりで察せられるかと思いますが、ただひたすらミーハーだったので、「新しいことを勉強できる環境がいい」「言語もいろいろ学べて、刺激を受けられるところがいい!」と思い、2000年当時、まだ新しい学部だった慶応義塾大学の環境情報学部を選びました。留学したことで英語はかなり上達し、TOEICでもほぼ満点をとれるくらいになっていたので、留学は大学受験にいい影響があったと思います。
Q.大学卒業後のキャリアについて教えてください。
語れるほどたいそうなキャリアはないのですが、大学卒業後からずっと編集者として働き、時の流れは恐ろしいものですでに編集者歴18年近くになります。留学・大学受験・就職活動と一貫して私の中にあったのは「世の中のトレンドを知りたい」「新しいことを知りたい」「知らないことを知りたい」という思いです。
講談社入社当初はファッション誌を担当し、トレンドを発掘&発信したり、有名人を取材したりと、若かりし頃の夢はだいたい叶えられたように思います。一方で10代、20代の女性の(女性誌だったので)不安や悩みに寄り添った記事づくりをすることで、いつしかそれが「やりがい」となり、自分の「知りたい」という欲求だけでなく、誰かの役に立つ、誰かの「知りたい」に応えるために働くことに意義を感じるようになりました。
現在はFRaU webというメディアで、ジェンダー問題や環境問題、教育にまつわることなどを中心に取材し、記事にしています。ジェンダーや環境といった社会性のあるテーマを扱う上でも、日本以外の国のニュースを意識する、あるいは日本人以外の視点を考えるようにする、という「偏らないものの見方」が自分なりにできるようになったのは、高校での留学経験がとても大きな影響を及ぼしていると思います。
FRaUはSDGsについてかなり初期から発信していた媒体なのですが、今年初めて小・中・高校生を対象とした「FRaU SDGs eduこどもプレゼン・コンテスト2022」を開催します。この取り組みによってこどもたちのSDGsへの理解を高め、また興味を持っていることに対して主体的に取り組むことへの一助になればと思っています。優秀賞は10万円の賞金も出ますので、興味のある学生さんにはぜひご参加いただきたいです。
価値観や人生観に大きな影響を与えた高校留学
Q.高校留学の経験は今の自分に、どのように影響を与えていますか?
繰り返しになりますが、高校留学の「すべて」が今の自分に影響していると感じています。高校留学というと「語学習得のため」と捉えられたり、実際にそれが目的になることも多いと思いますが、その実、体験して数10年経って感じるのは語学習得ではなく、私個人の価値観や人生観に大きな影響があったということです。
私が高校留学に行ってよかったと感じる点と、具体的に人生に及ぼしている影響については、次の3つが挙げられます。
強いメンタルと自立…10代という心が柔らかい時期に、まったく新しく知り合いのいない環境で他人と暮らす。それを1年間やり抜くことで、少しのことではくじけない精神力、継続する力、諦めない力を身に付けられたと思っています。
多様性への柔軟性…たとえばLGBTq、たとえばジェンダー問題、たとえば養子縁組、たとえば性教育…。様々な点においての多様性が、留学によってリアルに身についたと感じています。これは本当に本当に大きかったと思います。時代もあるので、今では日本もかなり多様性に関して語られるようになりましたが、それでもまだまだ海外に比べると認識が低い部分が多いですし、また机上で「勉強」として学ぶのと、実際に高校生で体験するのではその理解の深さに雲泥の差があると感じます。多様性が「当たり前」と感じられる、それは留学したからこそ得られる価値観ではないでしょうか。そしてこれが私の現在の仕事に大いに役立っています。
自分の居場所…学校にいると、友達関係に悩んだり、その環境での価値観に違和感をおぼえたり、あるいは新しい挑戦をしてみたいと感じることがあると思います。高校生の主な居場所は高校一択になりがちですが、留学をすると、「世界は広くて、今いる自分の環境だけが絶対じゃないんだな」ということに気がつきます。それによって選択肢が「日本」から「世界」へと広がり、その後の人生でも日本だけにとどまらない思考ができるようになると感じます。
今、私は2人の子どもを育てる母になりましたが、もし子どもが高校留学を希望したら迷いなく行って欲しいと思います。親子が離れることで、お互いにわかることがありますし、子どもだけでなく親にとっての自立にもつながるように感じます。
Q.留学を考えている高校生にメッセージをお願いします。
楽しいことも大変なこともすべてが糧になるのでぜひ挑戦して欲しいです。また、もし、お子さんの留学を後押しすべきか迷っている親御さんがいらっしゃったら、ぜひ、彼らが決めた「挑戦」の背中を押してあげて欲しいです。
瀬尾幸子さんプロフィール
東京都文京区出身
お茶の水女子大学付属高校1年次の夏より、アメリカに留学。卒業後、慶應義塾大学環境情報学部に入学。現在は出版社・講談社に勤務。FRaUという媒体のウェブメディア(https://gendai.ismedia.jp/frau)で編集を担当。女性のライフスタイル やジェンダー問題、地球環境、教育などSDGsにまつわるトピックを主に取り扱っている。2児の母。
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