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【高校生交換留学体験談】H.T.さん(南アフリカ派遣)第2弾

更新日:2021年5月27日

 EIL高校生交換留学プログラムの2021年冬派遣プログラムは、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、原則としてすべて中止となりましたが、一部プログラム参加の強い希望をいただいた生徒については、派遣先国の状況も見ながらプログラムを催行しています。  そのうちのお1人が南アフリカ派遣のH.T.さんです。 Hさんは交換留学プログラムの参加を強く希望し、留学に行くからには生活の様子が想像がつかないような、馴染みのない国に行きたいと、南アフリカを志望してくれました。


 前回(前回のレポートはコチラ)に引き続き、レポートを寄せてくださいました。今回はイスラム教との触れあいと、そこから得た多くの気づきについて書いてくれました。では、第2回のレポートをどうぞお楽しみください。

 

私が交換留学生として世の中に貢献できること

 交換留学の目的は、「異文化理解体験を主たる目的とした民間大使としての留学」と言えます。何語を喋るかも、どこにあるかも知っているし、どんな歴史を持っているかも知っている。けれど、例えば南アフリカであったら、なんとなく「アフリカの国」というだけで、遠い存在に感じてしまったり、「肌の色が違う人がいる国=危ない国、怖い国」などと一歩引いてしまう。これは悲しいことです。

 2020年の1月に、私の通う日本の高校にペルーの学生が来たことがありました。それをきっかけに私と彼女は仲良くなり、その後も電話をしたりするほどの仲になりました。私はそれまで、ペルーと聞いても、「南米のにある国」というイメージしかなかったけれど、彼女と友達になったことで、テレビや新聞で「ペルー」と見ると、その記事をしっかりと読むようになりました。それに、スーパーでペルー産の食べ物を見るとなんだか温かい気持ちになります。

 そして、現在もコロナは大丈夫か、などとお互い心配して連絡をとっています。これが異文化理解の、交換留学の醍醐味であり、素晴らしさなのかな、と私は思います。その国に友人がいるということだけで、その国を近い存在に感じ、心配する、とても素敵な循環だと思います。そして、友達を思うことは、その人の国を思うことに繋がります。このような連鎖をもっと作れる人になりたいと思い、私は異文化交流体験を目的としている交換留学を選びました。

 私が交換留学生として、世の中に貢献できること。それは、日本について、ケープタウンでの経験について、自分の目に見える範囲の人に、しっかりと自分の言葉で伝えることだと思っています。私が世の中のためにできることは、インスタで黒人差別や、LGBTQ、環境問題、メンタルヘルスについての記事をシェアすることでも、学生団体を立ち上げて、講演会をしたり、記事を作ったりすることではきっとありません。今の私の力でできることは、目で見える範囲の人に私の言葉で伝えること。その1つが、このレポートかな、と思っています。

 たった1人でもいいから、世界地図を見たときに、南アに目を向ける人がいたら、たった1人でも、ニュースで「南ア」と聞いた時に、興味を持ってそのニュースを聞いてくれたら、たった1人でも、スーパーで南ア産の食べ物を見た時に、南アのことを考えてくれる人がいたら。逆も同じで、たった1人でもいいから、世界地図を見たときに、日本に目を向ける人がいたら、たった一人でも、ニュースで日本と聞いた時に、興味を持ってそのニュースを聞いてくれたら、たった一人でも、スーパーで日本産の食べ物を見た時に、日本のことを考えてくれる人がいた

ら。そんな風に考えてくれる人が増えてくれたら嬉しいです。こんな気持ちでこのレポートを書かせていただいています。



イスラーム教について知る

 「イスラーム教徒」と聞いて、皆さんはどんなイメージを浮かびますか?正直に言うと、私が「イスラーム教徒」と聞いて考えるものは、ISIL、テロリスト、中東の砂漠の上に、黒いスカーフを頭に巻いて、手には銃を持っている男性の写真・・・いわゆる「イスラーム過激派」でした。きっとこのイメージは、2001年に起きた9.11の同時多発テロや2015年にジャーナリストの後藤健二さんと湯川遥菜さんがイスラム国を名乗るグループにより殺害された事件などから来ているのだと思います。とにかく、私が「イスラーム教徒」と聞いて思い浮かべるものは、最悪のイメージでした。

 ある日、1人の友人が「この高校の約65%の生徒はムスリムなんだよ」と教えてくれました。恥ずかしながら、そもそも「ムスリム」という言葉を知らなかった私は、本当に素敵で、尊敬できる考え方を持っている彼らと、私の中のイメージのテロリスト、過激派のイスラーム教徒を同じ仲間として結びつけるのは難しく、初めの1ヶ月は「ムスリム」は別の宗教の名前だと思っていました。(ムスリム;MUSLIMとは、アラビア語でイスラム教徒を意味する言葉です。)私は友達の大半がイスラーム教徒だと知り、とても驚きましたし、たくさん質問したいことがありました。けれど、宗教についての話はタブーだと思っていた私は、それからしばらく何も彼らに聞くことができませんでした。けれど、4月14日から断食が始まるということもあり、2、3週間ほど前から友達同士で宗教の話をしているのを聞くことが多くなりました。そして、ある日の放課後にムスリムの友達と出かけた時に、「宗教について聞いてもいい?」と尋ねてみました。彼女から返ってきた答えは、「もちろん!!なんで今まで逆に聞いてくれなかったの!」というようなものでした!!

 私は彼女に、宗教について聞くのがタブーだと思っていたこと、ただ興味本位で聞くのは相手を不快な気持ちにさせるものだと思っていたこと。今までの私の中のイスラームのイメージなど、全てを伝えました。すると、彼女はまず「全部伝えてくれてありがとう」といってくれて、そして、その後1時間以上イスラーム教について、(考え方や、食べ物、結婚システム)などについて教えてくれました。

※私が南アにきて出会った人は今のところみんな宗教に対してオープンだけれど、みんながみんなそうな訳ではありません。いくらオープンな人に多く出会っても、宗教に関することを話す前には、一言大丈夫かどうか聞くことは、とても大切なことで、忘れてはいけないことだと思っています。




知って欲しい!イスラームの/南アの人の、思いやりの心

知ってほしい話は本当にたくさんあるのですが、ここでは3つだけ書かせていただきます。


✔️宗教や関係性に関わらず慈悲の心に溢れるムスリム

 数週間前に、ホストマザーの友人に腎臓がんが見つかりました。彼は私が南アに着いた最初の週に尋ねてくれた人で、私も面識がある人でした。とても危険な状態だったのですが、高度な治療方法があるのにも関わらず、金銭的な理由で全ての治療を受けられていませんでした。けれど、それを知った1人のムスリムの方が、彼とほとんど面識がなかったのにも関わらず、募金を呼びかけ、大金の治療費を集めてきてくれたのです。ホストマザーの友人はムスリムではなくクリスチャンです。ムスリムの方のおかげで、彼の体調は回復し、今は安定しています。親しい友人というわけでもないのに、巨額の募金を集めて彼の為に渡してくれるなんて・・・。本当に心が温まった話でした。


✔️ホームレスに手を打っているのは政府ではなくムスリム/ケープタウン市民の方!

 ケープタウンではホームレスの人を多く見かけます。けれど、南ア政府は彼らに対してほとんどなんの政策も打っていません。ホームレスになっている人の多くは、ドラッグや大量飲酒により、道を外れてしまった人です。そんな彼らに再生の手を差し伸べているのが、ムスリムの方や市民の方なのです。サンドウィッチを配ったり、読み書きのできない人の書類申請の手伝いをしてあげたり、銀行口座を開設したい人に自分の住所を貸してあげたり、、、。本当にたくさんのことをしています。そして、彼らがホームレスの人に何かをしてあげるたびに何かきっかけになる言葉をかけています。私が目にした言葉を1つ紹介します。

 ある日、ホストマザーとお肉屋さんに行った日がありました。そのお店の前には20代くらいの男性と10才くらいの小さな男の子が座っていました。ホストマザーは彼らのためにお店で、小さなバーガーを買ってあげていました。そして彼らに、「なんでここに座っているんだ、学校は?仕事は?この小さな子はまだ義務教育途中なんだから、あなたがこの子を連れて行かないなら私はあなたを通報する。書類が書けないなら、私が書くから。ただ食べ物をあげてるんじゃないだから。」などときつい口調で伝えていました。(アフリカーンス語で伝えていたので、後で英語にしてもらいました)名前も知らない、ただそこに座ってた人に、ここまで熱く思いを伝えられるのは、素敵だなと思いました。


✔️火事発生直後から市民レベルでの支援活動がスタート

4月18日の昼間に、UNIVERSITY OF CAPE TOWNで火事がありました。4月19日現在もまだ消化活動が続いており、4000人以上の生徒と近隣住民が避難を余儀なくされ、行き場を失っています。そして、消防士の方は寝る暇もなく、消火活動を続けています。火事のニュースが出てから約30分後、クラスのグループチャットに、メッセージと共にこの写真が送られてきました。このポスターは何が消防士の方のために必要で、どこに持っていけばいいかを示したものです。このポスターはすぐに、What’s upのステータスやインスタで拡散されました。そして、火事のニュースが出てから約1時間後、私の参加している外部のランニングクラブのグループチャットで、「今、このアドレスでサンドウィッチを作っているから、手が空いてる人は、他に寄付できるものと一緒に来て!」と連絡がありました。この一言のメッセージで20人以上の人がすぐに集まりました。

火事で被災した方のためへのサンドウィッチ作り

 写真にはありませんが、水やエナジーバーなどもたくさん集まりました。コロナのこともあるので、距離をとること、手袋、マスク、消毒は忘れてはいけません。サンドウィッチを作りながら、私が改めて感じたことは、ここに暮らしている人は、人のために何かをすることを、当たり前の感覚として持っている人が多いということです。「困ってる人がいたら、助ける。当たり前でしょ。」って何も言わなくてもみんなが分かってるって感じ。そして、彼らは人のために何かを全力ですることを、恥ずかしいなんて1ミリたりとも思っていません。彼らと過ごす中で、自分の考えの情けなさに毎日気付かされます。火事は事故から始まり、3人の人がさらに火を大きくさせ被害を拡大させました。ケープタウン大学は町の中心にあり、今は中心街から車で20分ほどの私の家まで煙や灰が飛んできています。これ以上の被害が出ないことを願っています。



4月14日から断食が始まりました

 断食(ラマダン)はイスラム暦の9月を意味する言葉で、この月に予言者ムハンマドにコーランが啓示されたことから聖なる月となっています。イスラム教徒はこの期間日の出前から日没にかけて断食をします。期間は1ヶ月。その1ヶ月間は日中は、飲食、喫煙をすることはできません。

 禁じられているのは飲食だけではなく、人を怒ったり、怒鳴ったりすること、Fワード(事務局注※口にすることを禁じられるほど下品な言葉)を使うことや猥せつな妄想を抱くこともタブーとなっています。複数の音楽には、Fワードが含まれていることから、断食の期間には音楽を聴くことも禁じられています。断食を行う理由は、「食欲という人間の欲望に打ち勝つことでイスラム教徒を自覚し、貧しい人びとや飢えた人びとを思いやり、世界中のイスラム教徒との連帯感を共有するため」とされています。(もう少し分かりやすい言葉で言うと、毎日食べ物のある環境にありがたさを感じること、と言えるかと思います)

 ちなみに、私も5月14日から断食をしています。私が断食を決めた理由はいくつかあるのですが、一番の理由は、彼らの思いやりの心に感動したことです。私は初め、ムスリムでない人がやってみたいからやってみる、なんて理由で、断食をするなんて失礼であり得ないことだと思っていました。けれど、聞いてみると、断食を彼とするのは決して失礼なことではなく、毎年多くのムスリムでない、クリスチャンやインディアンの子も挑戦しているそうです。けれど、1ヶ月完全に達成する子はごく一部らしいです。


 この写真が断食のタイムテーブルです。緑の枠が朝ごはんの時間を、オレンジの枠が夜ご飯の時間を示していています。ムスリムでなければお祈りをする必要はないとで、やることは、緑の枠からオレンジの枠までの約10時間程度だけ、飲むこと食べることをしないこと、音楽を聴かないことをすればいいだけです。 

 なお、生理や妊娠中、病気の人はその期間は断食はできません。生理の場合、断食が終わった後に、休んだ分をまたその分断食しなければいけません。合計30日断食することがムスリムの人にとっては守らないといけないことです。

 私は常に何かを食べてたいタイプの人なので、初めは水さえ飲めない断食は達成できないと思っていました。ホストマザーにも、「あなたはできない!」って散々言われてました・・・。けれど、やってみると思ってた以上に簡単で、今のところ毎日達成しています!

 学校のムスリムでない友達は、1日だけ選んでやってみたりしています。ぜひ興味のある方は、1日選んでやって見てください!




美しい人と美しい景色との出会い

 数週間前から学校外のHiiT Squad というランニングチームに参加し始めました。活動日は毎週火曜と木曜の放課後と土曜の朝。火曜と木曜は大体同じルートを走るのですが、土曜の朝は毎週違う場所に行けて、たくさんの景色を見られてとても楽しいです。毎週土曜日は朝6:00からランニングを始めるので、途中で日の出が見られて、本当に美しい!毎回下は8才から上は70才までの80人くらいの人が参加していて、レベル別に20人づつくらいに別れて走っています。私のチームは毎回10キロ〜15キロ程を走ります。ここ2年程まともに走っていなかったので、初めは少し辛かったですが、今は会話も楽しみながら走っています。


下の写真は、ある土曜日の朝に走ったコースの途中で。左の山がTable mountain で右の山がLion’s headです。このコースは本当に景色がきれいでした!



下がチームの写真です!みんな暖かくて大好きなメンバーです。4月11日には10キロのレースがあり、なんと女子の部で優勝させていただきました!レースの後には、多くの方のサポートでたくさんの、食べ物を提供してくださりました。このチームを通して出会った人とも仲良くなれて、たくさんのことを知れてとても嬉しいです。



下の写真はレースの後の朝ごはんです。チームのほとんどはムスリムの方なので、ムスリム料理が多く並んでいました。


最後に

 長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございます。この1ヶ月は特に、感じたことが多く、まだまだ伝えたいことがたくさんです。

 新型コロナウイルスの状況についてお伝えすると、60歳以上の人に向けた予防接種の受付が1週間前から始まりました。感染者の状況は、南ア全体の7日間の平均で1180人程度です。東京オリンピックについてのニュースも最近目にする頻度が多くなりました。4月23日にはterm1(1学期)が終わり、10日間の休みに入ります。23日には成績表も出るのでとてもドキドキしています・・・。

 残りの留学生活もあと4ヶ月と数週間です。(事務局注※Hさんは在籍校の都合でプログラム期間は8か月の予定です)感染予防には気をつけて、新しい発見のある次の1ヶ月にしたいです!


(文章・写真 2021年南アフリカ派遣H.T.さん)

 

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