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【高校生交換留学体験談】井上咲春さん(アメリカ派遣)第2回

更新日:6月11日

 井上咲春さんは2022年EIL高校生交換留学プログラムでアメリカに派遣されています。今回、アメリカでの留学生活をお伝えしたいと、レポートを定期的に書いてくれています。


 第2回のレポートでは、アメリカでのイベントや、留学生活を通して感じたご自身の変化や気づいたことについて書いてくれました。ぜひお楽しみください!

 

 こんにちは!現在アメリカフロリダ州に留学している、井上咲春です。今回のレポートは11月頃に書いたもの以来、2回目になります。留学に興味のある方はもちろん、あまり興味のない方にも、ぜひ一度私の体験談を読んでいただけたらと思います!ご覧になってない方は、前回のレポートも読んでいただけるととても嬉しいです。


 帰国まで残り約1ヶ月となり、あと少しで友人やお世話になった方々に別れを告げなければならないのが本当に寂しいですが、同時に帰国後の生活や、日本の家族・友人との久し振りの再会が待ち遠しいような気もする、複雑な気持ちです。

 今回は、前回のレポート以降にあったイベントの中で大きかったもの、この期間で自分に起こった変化、また7月に渡航して以来9ヶ月をアメリカで過ごす中で気付いたものという3つに焦点を当てて書いていきます。


印象に残った出来事

 まずは自分の中で特に印象に残った出来事を3つ挙げたいと思います。1つ目は、2月半ばにWorld of Nations Celebrationsという国際交流イベントにボランティアとして参加したことです。これは私が滞在している地域に最も近いダウンタウンであるJacksonvilleで毎年開催されていて、30ヶ国ほどのブースが集まり、それぞれが郷土料理やその国の文化に関係する雑貨などを販売するイベントです。例えば日本ブースでは、牛丼や抹茶アイスクリームといった食べ物やアニメグッズなどの雑貨を販売したり、折り紙コーナーや習字コーナーを設け、日本の伝統的な文化に触れられるようになっていたりしました。日本で約9年間習字を習っていた私は習字コーナーの担当になり、事前に作った習字の作品を販売したり、その場でお客さんの注文を聞いて色紙に文字を書いたりしました。なぜこのイベントが印象に残っているかというと、このような大規模で国際交流イベントを開くことができるのは、多文化社会のアメリカだからこそだと強く実感したからです。先述した通りイベントには30ほどの国が集まっていたのですが、どのブースもその国出身の人によって運営されていました。1つのブースを運営するにあたり、食事を作る人、それを販売する人、雑貨を販売する人、その他の文化紹介をする人など、多くの人材が必要で、また準備や片付けもしなくてはなりません。実際、日本ブースは非常に多くの人によって運営されていました。それにも関わらず30ものブースがこのイベントに集まることができるのは、アメリカが多くの民族から成る国家だからという理由に他ならないでしょう。しかも、これが開催されたJacksonvilleは、ニューヨークやロサンゼルスのような大都市では全くないのです。日本で同じようなイベントを開くことを想像してみてください。ブースは10個も集まるでしょうか。そして、このような多文化国家アメリカでの国際交流イベントに参加し世界中の人々と関わったということは、私にとって非常に貴重な経験となり、また自信にも繋がりました。ボランティアをする中で、幼い頃日本からアメリカへ養子として出されたという方や、来月に愛知県にある私の出身市に旅行へ行くという方に出会い、お話をしました。また、休憩時間に他のブースを訪れた際は、普段全く関わることのない中東やアフリカ出身の方たちとお話ししました。これらの経験から、英語を通じて世界中の人とコミュニケーションを取ることが出来るのだという幸せを感じ、またこのような国境を越えた交流が好きだからこそ留学を志した自分の想いも再確認でき、忘れられないイベントとなりました。

 私と同じくEILから留学していてフロリダに滞在している2人の友人とも久し振りに再会することができ、とても嬉しかったです。



 2つ目は、日本食レストランの看板・内装のデザインをボランティアで担当したことです。縁あって、そのレストランのオーナーの方に私が習字が得意であることを知っていただけて、彼に看板のフォントと内装用の習字作品を依頼されました。そのレストランは「香辛料」という名前で、カレーやサンドイッチを扱っています。クラフトストアで木の板を何枚も買ってきて、それに「カツカレー」「卵サンド」といったメニューの名前を書いたものを多く作り、店内に飾って、日本の昔ながらの定食屋のような雰囲気を出せるようにと私自身がアイデアを出しました。そのレストランには日本人の方が働いており、その方を通じてこのボランティアをする運びになったのですが、作業をしつつ美味しいご飯を食べに連れて行っていただいたり、色々なお話をしたりと、沢山の楽しい経験をさせていただき、ここでもまた1つ素敵な出会いがありました。1月末からボランティアを始め、そのレストランは3月中頃にオープンしたのですが、自分が書いた「香辛料」という文字が実際の看板となっているのを見たときは、本当に感動しました。オーナーの方や日本人の方とは今も連絡を取り合っていて、今度一緒に出掛けようと話しています。

 また、1つ目のWorld of Nations Celebrationsと合わせ感じたことがあります。もともと私の夢は世界平和に貢献することだったのですが、その過程で、日本文化を世界中に紹介して、日本の良さを知ってもらいたいと思うようになりました。日本にいた頃、習字は私にとって自分のための教養でしかなく、まさかアメリカで国際交流に参加する大きな足掛かりになるとは思ってもみませんでした。この2つの出来事を通じ改めて日本文化の素晴らしさに気付かされ、もっと多くの人にその素晴らしさを知ってほしい、素晴らしさを広めていきたいと考えるようになりました。これを読んでくださっている皆さんにも、アメリカで日本文化が本当に魅力的だと考えられているということを、知っていただきたいです。

グランドオープンの日

 3つ目は、track and fieldに参加したことです。前回のレポートでカラーガードに所属していたと書きましたが、カラーガードでは普段の練習には参加できず試合にのみ参加したので、普段の練習も含めた部活動という点ではtrack and fieldがアメリカで初めてでした。その中でもdistance(長距離)を選びました。アメリカの部活動は主にVarsityとJV/Junior Varsityに分かれていて、これは上級者チームとそれ以外の生徒のチームを意味します。生徒数の少ない学校では分かれていないところもあります。また、高校によってチームのレベルも異なるため、一概にいずれかのチームのレベルが突出して高い・低いと言うことはできません。

 私はJVに入ったのですが、JVのレースは3月末までに全て終わってしまい、今は練習に参加していない状況です。

1月末から練習を始め、2月下旬頃からは毎週水曜日に遠征してレースに出場しました。レースのある日は、放課後にチームメイトと一緒にバスに乗って会場まで向かい、レース後にはコーチも含めた皆で外食をして、目一杯お喋りを楽しんでから帰宅するというのが、週に1度の1番の楽しみでした。

 このチームに入るという経験を通して、優しいコーチと素敵なチームメイトに出会えただけでなく、アメリカの部活動がどのようなものかを身をもって学ぶことができました。話が少し逸れますが、アメリカの大学入試では、日本と比べ部活動の実績が非常に重要視されます。そのため、ある程度生徒数の多い学校では、部活動の規模が大きくレベルも高いです。また日本では多くの生徒が部活動に参加する印象がありますが、アメリカではレベルが高いためか、皆が皆何らかの部活動に入るというわけではありません。それから1つの部活のシーズンが3ヶ月ほどと短く、1年間で複数のチームに所属できることも違いの1つです。このように様々な違いを感じることができたり、チームメイトとのかけがえのない思い出を沢山作れたりして、track and field distanceの一員として過ごした日々は間違いなく宝物となりました。



自分に起こった変化

 次に、自分に起こった変化についてです。きっと数え切れないほどの変化があったと思うのですが、ここでは3つ挙げていこうと思います。

 1つ目は、英語力の向上です。これだけ長い間アメリカで過ごしていれば誰でも上手くなるだろうと思われるかもしれませんが、ある程度上達することはできても、ネイティブと同じくらい話せるレベルというのは非常に難しく、今の私も程遠い状況です。しかし、留学初期と比べると確実に成長していて、自分の話したことを聞き返されることはほとんど無くなりましたし、最初は呪文のように聞こえていたクラスメイトの雑談が、一言一句聞き取れるようになってきました。前回のレポートを読んでいただいた方ならご存知かと思いますが、私はホストマザー・ホストシスターとは日本語で会話する環境にあります。つまり、他の留学生に比べ英語を使う機会が少ないのです。留学前はそのことにかなり不安があったのですが、与えられた環境の下で努力することが交換留学の指針であるため、学校で友人と出来るだけ沢山会話したり、SNSツールを利用してよく使われる言い回しや発音を学んだり、自分に出来ることを重ねてきました。今では、自分が言いたいと思ったことはほぼ100%伝えられるようになり、お陰で学校での日々がとても楽しいです。



 2つ目は、コミュニケーション能力の向上です。これは1つ目とも関わってくるのですが、英語力に自信がついた分、質問してみよう、話しかけてみようといったことを積極的に実践できるようになりました。これは私の意見なのですが、留学生は出来るだけ多くのチャンスを掴んだもの勝ちだと考えています。1年という限られた時間の中で、どれだけ多くチャンスを掴み自分の糧とするかは、自らの積極性によるものが大きいと思うのです。これは実は人生においても同じことで、限られた時間しか与えられていない中で、いかにそれを有効活用できるかは自分次第だと私は考えます。だからこそ、コミュニケーション能力の向上は、これからの自分の人生により多くのチャンスをもたらしてくれるのではないかと期待していますし、これからもその向上に努めたいです。 



 3つ目は、視野の拡大です。日本にいた頃の私は、「これはこうするべきだ」「絶対にAよりもBの方が良い」といったように決めつけてしまう傾向がややあったように感じますが、自由でのびのびとしており、「他人は他人、自分は自分」のスタンスの人が多いアメリカで暮らす中で、何かを決めつけて物事を判断するのは自分のエゴでしかなく、また自分自身もその型にはまる必要は無いのだと気付かされました。更に、見えている部分だけで善悪の判断を下さず、見えていない部分も考慮できる人でありたいと強く感じるようになりました。こうして文字に起こすと全く普通のことを言っているようですが、日本にいた頃、知らず知らずのうちに負のサイクルに陥ってしまっている自分がいたように感じます。アメリカで獲得した視野を帰国後も忘れないようにしたいです。


留学生生活を通して気づいたこと

 抽象的な話が続いてしまいましたが、最後に私がこの9ヶ月で気付いたことを書きます。有り余る程ありますが、これまでにまだ言及していないものの中で最も印象深いことは、多文化社会の実態です。具体的にどういうことかというと、ずばりアメリカ人には「ルーツとしてのアメリカ人」が存在しないのです。

 友人と話していて、両親はどの国出身か、自分はどのようなルーツを持っているかという話になることが多々あります。私の通っている高校には白人が多いので、アイルランド系、イタリア系、ドイツ系、フランス系などヨーロッパにルーツを持つ人が多いですが、日本人の血を継いでいる友人もいますし、南国出身の黒人の友人もいます。しかし誰もに共通していることは、「アメリカ出身だ」と答える人がいないことです。もちろん、彼らが現在住んでいる国を問われたらアメリカだと答えるでしょうが、彼らにとってルーツとしてのアメリカ人はあくまで存在しないのです。このことは、アメリカが多種多様な民族・人種から成る国家だということをとてもよく表していると思います。

 また、先述したように日本人の血を引く友人や、親が軍に勤めている関係で日本に住んだことのある友人も何人かいますが、私は高校で日本語を話せる人に出会ったことがありません。外国人の存在が珍しい日本では、例えば両親または祖父母の誰かが外国人の場合、その国の言語を話すことが出来たりその国についての知識が深かったりすることが多いように思いますが、アメリカ出身の人以外の存在が当たり前であるアメリカでは、それが全く当たり前ではないのです。そういった発見は実際に現地の人と関わりを持たなければ見つけられることはなかったであろうものなので、とても興味深いなと感じます。日本もより多文化になって様々な国の長所を吸収してほしいと思う反面、日本人としての自覚やその概念を失いたくはないと感じるので、どちらも両立していける社会とはどのようなものだろうと考えを巡らせてしまいます。


 アメリカでの残り僅かな日々を一日一日大切にしながら、常に向上心を持ち、何事にも全力で臨んでいきたいです。最後まで読んでいただきありがとうございました!




(写真、文:2022年度アメリカ派遣生 井上咲春さん)

 

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​EILの正式名称は「Experiment in Intertnational Living」このサイトは、EILのプログラムを通じて国際交流体験をした人たちを「Experimenters」と称し、その体験やその後にどう活かされたかを紹介するEILのウェブマガジンです。

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