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仲田大樹さん(2018年フランス派遣)インタビュー

これまでに数多くの人たちが高校生交換留学プログラムに参加してきました。OB/OGたちの進路やキャリアは多岐に渡っており、それぞれの分野で活躍し、社会に貢献しています。


 今回インタビューを行ったのは、2018年にフランス派遣プログラムに参加された仲田大樹さんです。仲田さんは、EILが沖縄県から委託を受けた「国際性に富む人材育成留学事業」の参加OBです。現在は秋田県にある国際教養大学で学ぶ仲田さんは、学内に留まらず、秋田県における全額助成の高校留学事業の立ち上げや、秋田県のお弁当屋さんのフランス進出にも携わっていると聞き、今回お話を伺いました。

 

高校生活に感じていたモヤモヤを解消したくて高校留学へ


Q.まず高校留学についてお話を聞いていきたいと思いますが、交換留学に参加しようと思った経緯を教えてください。

 私は何かモヤモヤとした気持ちを抱えながら高校生活を過ごしていました。大学受験がゴールのレースを走らされているような感覚があり、それに対して言語化できない抵抗感がありました。授業中も意見があるのに、なかなかみんな積極的に発言しない雰囲気があり、そういうことに言語化できないモヤモヤとした気持ちがある中で、自分の価値観を広げたいと思うようになりました。そんな中、沖縄県が主催する「国際性に富む人材育成留学事業」を知りました。この事業は、県内の高校生80名(当時)を様々な国に交換留学生として派遣するという事業です。自分の中にあるモヤモヤが解消するまたとないチャンスだと思い、出願を決意しました。留学費用の大方を県が負担してくれるため、保護者の負担が少ないことも後押しになりました。

 留学先国は20ほどの国から希望を出すことができたのですが、その中でも、幼少期からピアノを習っていた経験から、音楽の歴史が深いヨーロッパを選択し、フランスに派遣が決まりました。フランスをはじめとするヨーロッパ諸国は、日本における様々な制度立案の際に参考とした経緯もあり、社会制度なども含めて先進的で、そのような地域で暮らせることは、自分の視野を広げることができる機会となると思いました。


Q.交換留学で得たものは何だと思いますか?

  本当に色々な経験をしたので、言語化することは難しいですが、あえて言うならば、「自分の意見をしっかりと持ち、意思表示することの大切さ」「いろいろな視点で物事を見ることの大切さ」「人と積極的にコミュニケーションを取ることの大切さ」「自分の住んでいる地域、地元に対して理解することの大切さ」「自己分析の大切さ」など、実体験をもって学べたことだと思います。ある日の食卓で、「日本のお化けって何?教えて?」と言われて、黙ることしかできなかった自分を、今でもはっきりと覚えています。「日本から来ました」と紹介すると「東京?大阪?京都?」と言われ、自分の故郷沖縄を、「東京大阪京都と一緒にされたくない」と無意識に思ったことで、自分の故郷へのアイデンティティも認識することができました。外に出て初めて、考えたこともなかった自分の国のこと、地元のことを考える機会を得ました。

 授業でも、留学生としてではなく1人の学生として扱ってもらえたので、自分の意見を積極的に述べること、わからないなら「わからない」と言うことが、本当に重要だと身をもって体感しました。しっかり「自分の意見」を持ち、それを「相手に積極的に伝える」ことができるようになったことは、今の充実した人間関係にもつながっていると思います。



進学先の秋田県で全額助成留学の立ち上げを目指す


Q.帰国後は国際教養大学に進学されましたが、進路決定の経緯を教えてください。

 留学前は漠然と法学部や経済学部のように学習分野を限定することには抵抗感があり、国際系の大学に興味を持っていました。

 交換留学を通して実際にフランスの高校に通い、自由に発言できる環境で生徒みんなが主体的に学ぶ姿を見て、フランスを含む海外進学を検討しました。しかし、フランスの高校の授業も完全には理解できないのに、専門教育を外国語で、というのは現実的ではないと考えを改めたのが帰国2ヶ月前のことです。

 そこから日本国内に限って進学先を探しましたが、その時の基準として「学習分野を限定しなくていい」「海外に近い環境」という2つを置きました。また、どこか無意識的に「きっと都会に行くんだろうな」と思っていました。ところが、フランスで出会った日本人の方や、家族と話す中で「田舎には今しか自分の意思で住めないんじゃないの?」「都会はいつでも住めるよ」「住む場所を選べるのは大学生だけだよ」と言われ、自然豊かな秋田県にある、国際教養大学を志望することを決めました。

 結果的に秋田に来て本当に良かったと思える日々を過ごせています。



Q.秋田で全額助成留学の立ち上げを目指しているそうですが、きっかけを教えてください

 2020年夏の大学1年の夏頃、新型コロナウイルスの影響で沖縄県の「国際性に富む人材育成留学事業」が派遣中止となり、そのまま永久的に事業自体が消滅してしまうかもしれない、という話が留学OB/OGの間で流れてきました。OB/OG有志で事業存続に向けた署名活動を行うこととなり、私も参加しました。

 その署名活動を行う中で、「全額助成」で交換留学生として海外に派遣してもらえるこの事業は、沖縄の多くの高校生にチャンスを提供した特別な事業であることを改めて気付かされました。そこで「この事業が10年後も沖縄で存続して万歳」ではなく「ロールモデル化」して他府県で応用すべきではないかと考えました。同じように他府県でも多くの高校生にチャンスが与えられて欲しいと思い、まずは進学先の秋田でその動きをつくろう、と決意しました。


Q.現在の活動状況を教えてください。

 多く賛同を集められるアイディアだと思っていましたが、実際に「全額助成の留学事業を立ち上げたいんだ」と地域の人や、周囲の大人に言っても、「別に秋田じゃなくてもいいじゃん」「なんで秋田なの」と言われ、最初の壁にぶつかりました。

 高校留学の経験から、地元沖縄に対するアイデンティティはすごく強化されていました。一方で進学先の秋田には当然ながら根を張るまではいっていないということに気付かされました。そのことから、「この全額助成の留学事業を実現させるためにも、せっかく秋田にきたんだし、地域に根を張って、ちゃんと秋田県民になろう」と思いました。そこで地域事情に関心を持ち、いろいろな場所に出向き、いろいろな人に会って話をしました。秋田について深く知ることで、なぜ秋田にこの留学事業が必要なのかを考えました。

 そうして様々な人と対話を重ねるうちに、応援してくれる社会人や仲間が増えていきました。同時に様々な場所で講演会、講話などを行わせてもらえるようになりました。全額助成の留学事業立ち上げに関することや、自分の留学体験談などを話す一方で、県外からきた若者の代表として経営者の会合などでもお話しさせていただきました。秋田は「若者の県外流出」が深刻な問題とされています。この「若者の県外流出」に関しては私も色々思うところがあり、別途綴ってみたので、もし興味のある方はこちらをお読みください。


 全額助成の留学事業に対して、少しずつ賛同者が集まってきていますが、沖縄の事業のように、自治体の主催とするのはハードルが高いこともあるため、様々な可能性を探りながらどのように実現させていくのかを検討しています。大学卒業までに1人でも留学に送り出したいと、仲間と一緒に取り組んでいるところです。



Q.それ以外に、お弁当屋さんのパリ進出を手伝われたと聞きました。こちらについても教えてください

 大学2年になった直後、「鶏めし」の駅弁で全国的にも有名な秋田県大館市の(株)花善の八木橋社長が、フランスに進出するに当たってサポートできる学生を探しているとのことで大学経由で声がかかりました。この話を聞いた時、迷わず「やります!」と即答しました。

 具体的なサポート内容として、フランスで販売される「秋田弁当」のフランス語名を考えたり、販売戦略や広告、SNS運用、店舗運営などについて学生の視点から提言、提案などをさせてもらいました。実際にパリの店舗で活用されているお客さまアンケートも作りましたし、八木橋社長と2人で秋田県庁で記者会見をするという貴重な体験もさせてもらいました。

 今後も、フランスでどうやって売り上げを伸ばしていくか、さらなる店舗拡大などに向けて、来年度も学生チームプロジェクトリーダーとして取り組んでいく予定です。


パリにオープンした店舗

今は自分が意義を感じることを全うしたい


Q.今年大学3年生になられると思います。残りの大学生活の展望を教えてください。

 国際教養大学の大きな特徴である「1年間の義務留学」を2022年夏より予定しています。留学先は東欧、エストニアに決まりました。高校留学で1年間西洋の暮らしを体験した身として、次は西洋の文化と共産圏の文化が混在している、世界でも類まれな地域で勉強することでさらに見聞を深めたいと考えています。

 学業面では、主に国際関係論などを学んでおり、安全保障などの観点からも自分の故郷である沖縄についても深めていきたいと思っています。

 留学から帰国した後の事についてはまだ決めていません。というよりは、今は多くの選択肢を感じているので、決め切れないというのが正直なところです。


Q.大学卒業後についてはどのような進路を考えていますか?

 現時点では卒業後のこと、特に就職先という意味では深く考えていません。これからまた1年の留学が待っているので、その中できっと考え方や興味なども変わるだろうと思っています。なので今の時点では特に限定せずに、可能性を広げたまま残しておきたいと思っています。留学から帰国する頃に、自分が将来的にやりたいことが見つかり、それを実現できるような会社があれば就活するでしょうし、なければ起業するかもしれません。そのためにも、今は自分が取り組んで意義を感じることを全うしておきたいなと思っていて、留学事業の立ち上げもその1つだと思っています。



直感を信じてどんどんチャレンジを


Q.留学を考えている高校生にメッセージをお願いします。

 友人からの受け売りの言葉ではあるのですが、「どんどんチャレンジしたらいい!周りに前例がなくて不安なら、前例になってしまえば良い。やってまえ!」です(笑)。

 とにかく直感を信じていろんなことにチャレンジしたら良いと思います。やらずに後悔するより、やって後悔したらいい。もし失敗するようなことがあったとしても、必ず次に繋がるものです。確かに交換留学は楽しいことばかりではなく、辛いこともたくさんありますが、乗り越えたら絶対強くなるものです。


 高校生の今だからこそ吸収できることもたくさんあると思うので、どんどんチャレンジして欲しいですね。そして、出発する前には、日本のことや自分の住んでいる地域のことをきちんと学んでいくことをお勧めします。学んでから出発したとしても、まだ足りないと感じることはたくさんあるはずだけど、事前に自分の住む国地域に対する理解を深めていくことは留学にあたってとても大事だと思っています。

 高校生の皆さん、今しかできないですよ!頑張れ!



 

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​EILの正式名称は「Experiment in Intertnational Living」このサイトは、EILのプログラムを通じて国際交流体験をした人たちを「Experimenters」と称し、その体験やその後にどう活かされたかを紹介するEILのウェブマガジンです。

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