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【高校生交換留学体験談】H.Oさん(イギリス/アイルランド派遣)

更新日:2020年11月10日

EIL高校生交換留学プログラムでは、派遣国の一般家庭にホームステイをしながら、現地の学校に通います。異文化の中で、様々な人々や価値観に出会いながら、成長することがでいます。

今回は、まさにそんな体験をしてきた、H.Oさんの体験談をご紹介します!


「Are you from Japan?」「Is this Japanese?」彼は私にある漢字を指さし話しかけてきました。黒い髪、浅黒い肌、大きな瞳がとても印象的でした。初めてイギリスの学校に登校した日、思いやりに溢れた彼の笑顔に私の緊張は一気にほぐれて「I am Japanese. I am from Nagasaki」と言いました。すると彼は「僕はナニ人でもないんだ」と答えたのでした。

私は昨年9月から9ケ月間交換留学生としてイギリスとアイルランドで生活をしました。それはピースメッセンジャーとして政治、宗教、人種を超えて互いに尊敬し合い友情で結ばれることを使命としています。私はイギリスのウエールズの高校に派遣され、その高校には私しか留学生はいませんでした。

留学前はビッグベン、二階建てバス、赤い電話ボックス、エリザベス女王、大好きなハリーポッターのイメージしかなかったイギリスは人と触れ合うことでどんどん変わっていきました。多くの友人やホストファミリー、先生方に支えられ、また、異文化を知ることや人との出会いが私を世界へ、大きな夢へ、と膨らませました。その中でも特に印象深いムハマドとのストーリーを紹介します。


ムハマドとの出会い

「ナニ人でもない」と答えたムハマドは実は5年前にシリアからイギリスへ命がけでやってきた難民でした。彼は悲しみや苦しみを乗り越えて平和な世界をつくることの大切さや日本が世界中から「戦争をしない平和な国」だと称賛されていること。シリアの子供たちが平和な祖国へ帰りたいと願っていることを教えてくれました。しかし祖国へ戻れば徴兵され、シリア人同士の戦いに参加し、「人を殺せ」と命じられ、もし拒否すれば投獄されてしまう。だからシリアには帰りたくても帰れないと言っていました。

シリアではアラブの春をきっかけに2011年から民主化を求める市民と約40年続く独裁的なアサド政権との対立で今も複雑な内戦状態が続いています。

2015年、トルコの海岸に溺死したアラン・クルディ君3歳の遺体が打ち上げられた写真を覚えていますか?この写真はシリア難民の悲劇を世界中に知らしめました。また、ISILによる日本人拘束事件では犯行声明が読み上げられ、無残にもお二人が殺害されてしまいました。これはテロリストの恐怖を身近に感じた出来事でした。しかしそれに伴い、大半の日本人そして世界の人々がイスラム教徒は野蛮な人達だと勘違いしたと思います。

ムハマドは言いました。「日本は美しい国で、国民が優しい。平和で戦争をしない国と世界中の人々から尊敬されている。でもシリアと言ったら内戦、空爆、化学兵器。ちっともいいイメージではない。僕はイスラム教徒だから、学校に行ったらすぐプレイルームでメッカに向かってお祈りをするんだ。現地の学生はイスラム教=戦争という怖いイメージを持ってだれも話しかけてくれず友達は一人もできなかった。自分がその国の人間ではないことはとても居心地が悪く、難民になってシリア人である誇りを失いかけていた」と…。 私も、イギリスに来たすぐは、学校や住む地域にアジア系の人がいなくて、自分の容姿に違和感を感じていました。だから彼が経験したように異国で住む難しさを理解することができました。そして人種差別や偏見がない世界をつくることの難しさも感じました。

彼は「内戦が始まってからシリア人はみな、平和がどれくらい大切か。今、世界で一番シリア人が本当の平和の意味を知っている。悲しく恐ろしい体験をしたからこそ、イギリスでのチャンスを無駄にしたくない。いつか建築家になって平和な美しいシリアを取り戻したい」と言いました。

私は「日本人は74年前に東京大空襲、沖縄地上戦、広島と長崎に原爆を投下され、2011年には東日本大震災など度重なる自然災害で大切な家族や家を失ったからシリアの人々と同じように平和の大切さを共感できるよ」と私は答えました。

私はムハマドに会うまで考えたこともなかった難民問題について、難民にならざるを得なかったその背景までを考えるようになりました。日本にいたころには遠い国であまり知らなかったイスラム教の文化を少しずつ理解していきました。

首都ダマスカスは四千年の歴史があり、内戦のため今は世界遺産から危機遺産になっています。平和だった頃のシリアはジャスミンンの香りがする古い街並み白い鳩が飛んでいて子供たちは楽しそうに学校へ行っていたそうです。私はイギリスを離れる日にムハマドに「どうか祖国を忘れないで。」と伝えました。いつの日かムハマドが建築家になって美しいシリアに帰ることを願っています。


イギリスでの生活

毎週末、72歳のチャーミングでヤングなホストマザーがオープンカーを走らせウェールズを全部見せてくれました。西ウェールズ海岸にあるキャラバンで過ごしたこと。心臓病の子供のためのリサイクルショップでボランティアをしたこと。ロンドンやスペイン、スコットランドの旅行にも連れて行ってくれたこと。ホストマザーは私を本当の娘のようにかわいがってくれ、エリアレップでもあり、心配なく生活できました。


派遣校はオックスフォード大学に進学するような進学校で一人一人熱心に勉強していました。イギリスでは英語文学と歴史と地理を選択しました。ウェールズではウェルシュスタディが必須でこれは日本でいう総合学習や進路の授業に当たります。英語文学ではジェーン・エアを読み、英語の文学的な古典文法を学び、今後の英語学習への意欲を高めてくれました。歴史では一番私が好きな14世紀から17世紀にかけての英国の王朝を学びました。特にスコットランド女王メアリースチュワートとイングランド女王エリザベスの対立は毎時間の授業が待ち遠しかったです。地理では東日本大震災の地震の被害についてを詳しく学び英語でのレポート提出は大変でした。

アイルランドでの生活

アイルランドのホストファミリーは老夫婦とその娘さんと孫のアナちゃん8歳でした。私はイギリスの時はホストマザーと一対一の関係でしたが、アイルランドではその家族の一員になることを心掛けました。初めの二週間は早口で独特なアイルランド訛りの英語が聞き取り辛く大変だったことを覚えています。おじいちゃんはアイルランド語を教えてくれ、孫のアナちゃんと学びました。またアイリッシュダンス教室にも通いました。アイルランドの学校では交換留学生を多く受け入れていいました。先生も現地の学生も留学生に対して理解がありました。スペイン、ドイツ、イタリア、スイス、チェコ、スペインからの交換留学生と祖先がフィリピンやインド、ナイジェリアのバックグラウンドを持つ学生もいました。その学校は日本やアジアからの留学生を受け入れるのは初めてでした。先生はいつも何かあったらすぐに伝えてと言ってくれました。そして現地の学生達も親日でした。登校初日に日本のアニメを見ていた友達が話しかけてくれ、すぐに友達ができました。毎週末、友達とアイルランドを観光し満喫しました。アイルランドでは英語、数学、地理、家庭科、音楽、生物を選択しました。教科書もとても分厚く、宿題もたくさん出されました。私は初めは10%しかとれなかったテストが最後には75%になり、ホストファミリーは私の頑張りをとても褒めてくれました。

日本を飛び出して、思うこと

日本の高校生とイギリスとアイルランドの学生を比べると、彼らはとても意欲的に積極的に授業に参加していました。居眠りをする人は一人もおらず、内職する生徒、宿題の提出期限を守れない人はいませんでした。その点は日本の学生が見習う必要があると思いました。交換留学生と現地の高校生と私は自分の国のお菓子を持ってきて昼食を囲みました。自己紹介で始まり、出身国の紹介、派遣国と出身国の違い、時には社会問題など様々なテーマを皆で話しました。頭の中で日本語に変換せず英語自然と考えることができるようになりました。そして両国それぞれの国を離れるころには、英国訛り、アイリッシュ訛りになったねと友達や先生から言われ、とても嬉しかったです。留学最後の二週間は友達、家族、他の交換留学生と本当に離れたくないと思いました。私は日本にいたら、短期間で世界各国のこれほど多くの友達を作ることができなかったと思います。

日本を飛び出してみると、つくづく気づかされるのは日本人でよかったということです。私は今までに、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ベトナム、インド、ネパール、モンゴルに行ってきました。しかしどの国に行っても嫌な思いをしたことがありません。それはこれまでの日本人が現地の方と親交を深めて、日本人が礼儀正しく互いの文化を理解しあい、現地の人から信頼されていたからだと思います。私はいつも日本人であることを誇りに思うと同時に、海外で過ごすときには日本人として恥じる行動をしないことに気を付けています。現在はインターネットでまるで世界中を旅しているように写真で様々な国を見ることができますが、やはり実際にその国に行き人と出会うことは自分の成長の糧となります。

私には報告書4000字には書ききれないほどの感動のエピソードがあります。この留学で私がイギリスとアイルランドで出会ったヨーロッパ、中東、アフリカ、東南アジアの友達は私の宝物です。私と一人一人の友情は、日本と世界各国の平和の礎となっていくと思います。

ある出会いが時に私たちの記憶にずっと残り続けるように、世界の一員として「心のドア」を開かなければなりません。心と心の国際交流する大切さがこの交換留学生として学ぶことができました。高校生交換留学のチャンスを応援し理解してくれた両親にとても感謝しています。

写真、文:2018年度派遣生 H.O


 

EIL高校生交換留学プログラムでは、通常1つの派遣国に1学年間(約10ヶ月)滞在しますが、イギリス/アイルランド派遣のみ、イギリスに4ヶ月、アイルランドに5ヶ月滞在となり、2か国での生活を体験することができます!資料請求はコチラから!

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​EILの正式名称は「Experiment in Intertnational Living」このサイトは、EILのプログラムを通じて国際交流体験をした人たちを「Experimenters」と称し、その体験やその後にどう活かされたかを紹介するEILのウェブマガジンです。

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